米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

 
Warner Bros. / Photofest / ゼータイメージ

新作が公開されるたびに気になるトム・クルーズ(笑)。今回は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』です。侵略者からの攻撃によって、滅亡寸前となった近未来の地球が舞台になっているSF。トムが演じるのは、同じ日を何度も繰り返す時のループの中に巻き込まれてしまった兵士。

まず何がびっくりしたって、今回はトムが脱いでいないこと(笑)! そればかりか重い機動スーツを着て、ひたすらエイリアンと戦っています。その姿を見ながら、スーパースターでありながら自分をあえて大変なほうに追い込んでいくこの精神、やっぱり好きだなと改めて感じました。

アクションのキレを見ていると、トムはハリウッド版のジャッキー・チェンを目指しているの!? と思えるほど。もちろんCGを使っているシーンもありますが、それに頼りすぎず自分の肉体を駆使して良質なエンターテイメントを作ろうとしていることが伝わってくるんですよね。
まるでゲームのように〝何度も死んで何度も生き返る〞という描写の繰り返しもあと3回くらい続いていたら飽きていたかもしれませんが、絶妙のテンポと回数だったと思います。何度も観ているうちに、トムと戦う兵士たちにも愛着がわいてくるところもよかったですね。

トムの相手役である女性軍曹を演じているのはエミリー・ブラント。『プラダを着た悪魔』でのアシスタント役とはまったくイメージが違っていたので、驚いてしまいました。鍛え上げられた肉体は素晴らしかったのです
が、つい演じる側の気持ちになってしまい、首を痛めそうで大変な役だなぁと心配になるシーンも。
ちょっぴりラブの要素もあるのですが、意外とあっさり。何せトム・クルーズだもん、これくらいがちょうどいいよね! というキスシーンでした(笑)。ツッコミはじめるときりがない映画ですが、理屈抜きに楽しめるおすすめのSFアクションです。

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』
日本の人気作家、桜坂洋の原作にハリウッドが着目して、トム・クルーズ主演、『ボーン・アイデンティティー』のダグ・ライマン監督によって映画化が実現。リセットしてもとに戻るゲームの世界のようでありながら、何度倒れても立ち上がって戦う姿に胸が熱くなるSFアクション。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2015年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。