「お金持ちは、お金についてどんなふうに考えているの?どうつきあっているの?」というミモレ編集部の疑問から生まれたインタビュー企画。各界のお金のプロに「お金持ちのお金の価値観」についてじっくり伺っていきます。
今回は投資家・ファンドマネジャーの藤野英人さん。投資信託の「ひふみ」といえば、聞いたことがある方もいるのではないでしょうか? その「ひふみ」を運用している会社の代表取締役社長である藤野さんに、マネーコラムニストの西山美紀と編集部員の片岡が話を伺いました。
<今回お話を伺ったのは……>
藤野英人さん
投資家、ファンドマネジャー。レオス・キャピタルワークス代表取締役社長・最高投資責任者(CIO)。国内・外資大手投資運用会社でファンドマネジャーを歴任。2003年にレオス・キャピタルワークス株式会社を創業。主に日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ」シリーズを運用。一般社団法人投資信託協会理事。著書に『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『お金を話そう。』(弘文堂)他多数。
――前回は、お金持ちは「持っている資産のうち、現金の割合が少なく、投資の割合が高い」というお話を聞きました。ところが一般の人は、株などの投資に対してよくないイメージを持つ人も多いですね。
藤野英人さん(以下敬称略):そうなんですよ。「投資は悪」という人が多いですよね。株式投資とは、株のオーナーになり、その会社のオーナーになることですが、そもそも会社が「善なる集団」だと思っている人が少ない。「会社のせいで」「会社は金稼ぎのために悪いことも厭わない」なんていう負の論調が多いですから。
――日曜の夜に「明日から仕事かあ……」というため息もよく聞きます。
藤野:そう、会社嫌いの人が多いですよね。本当は自分も会社の一員だし、自分で選択してその会社に行っているのだから、嫌だったらいつでも辞められるはずなんですけどね。
あるデータで自分が働いている会社に対する信頼度を聞いたところ、世界の主要国で日本は韓国についでワースト2位。信頼度は59%で、逆に信頼度80%以上なのが中国とアメリカです(2019 エデルマン・トラストバロメーター)。
実はこれ、アメリカに離婚が多いのと関係しているんですよね。
――離婚? 自分の好き嫌いに忠実ということでしょうか?
藤野:その通り。アメリカも中国も、嫌だと思ったらすぐに辞めてしまうんです。だから、おおむね好きな会社で働いていることになるわけ。では、日本ではどうでしょうか。新橋に飲みに行くと、会社や上司の悪口をみんな言っていますよね。「そんなに嫌なら会社を辞めるか、会社をよくするかどっちにすればいいのに」と言いたくなります(笑)。僕たちは、もっと自分の好き嫌いに忠実になったほうがいい。
――例えば身近な例でいうと、ファッションやメイクでも、自分の好き嫌いというより、つい流行やメディア、他人の目線に合わせているような気がします。
藤野:それですよね。でもこれまで、自分の好き嫌いを大切にすることを、親や社会が重視してこなかったから仕方ないかもしれません。
もし友人や家族で有名企業に勤めている人がいて、「仕事がつらくて、やめたい」と相談されたら、「せっかくいい会社に入ったんだから、もう少しがんばったら?」「部署を変わればいいかもしれないから、少し我慢してみたら?」って言うんじゃないかな。
「嫌だったら辞めれば」とは簡単に言わない。「みんな我慢しているんだから」って思っていますよね。
――その結果、その会社や仕事が嫌いでも続けてしまいますね。
藤野:はい、好き嫌いを重視して行動するよりも、「変化すること」をリスクだと思うんでしょうね。
結果的に、好きではない会社に居続ける。そんな人がたくさんいる製品やサービスは、いいものになるでしょうか。そんな会社に投資したいとも、思わないですよね。
だから、株に対してもきれいなイメージを抱けなくなる。労働や投資、お金の問題、すべてつながっていると思います。「もっと、自分の好き嫌いを大切にしようよ」と伝えたいですよね。
――「好き嫌いを大切にする」、簡単なようでできていない人が多そうですね。そうすれば、いい循環が生まれそうですね。
藤野:そうなんです。好きな会社に勤める人が増えれば、会社はうまくいくに決まっている。投資というのは、会社を応援することで、世の中を応援することにつながるので、まさにいい循環が生まれます。
――今の仕事や会社が嫌いだと感じる人は、一度考えた方がよさそうですね。
藤野:はい、自問自答してみてほしいです。職場の上司が嫌いなのか、仕事の内容が嫌いなのか、社風が嫌いなのか。
自分をしっかり見つめる力がないと、仕事でも投資でも成功できない。人生が成功できるわけがないんです。稼ぐこと、お金を使うこと、投資することは全部つながっていて、バランスよく考えなくてはならない。
お金持ちの人は、これらのバランスが上手。表面的なことだけで判断しないで、「何が大事なのか」というところまで深く見つめているんです。
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