米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。
2014年に封切られた映画のなかで、私にとってのベスト作をなかなか決められずにいたのですが、ついに出会ってしまいました。その作品のタイトルは、『6才のボクが、大人になるまで。』。
ひとつの家族の物語を12年にもわたって役者たちが演じ、それを2時間45分の映画にした作品です。ドキュメンタリーでもないし、普通の映画でもない。そのバランスが絶妙で、主役の男の子だけではなく母親や別れた父親の成長物語になっているところも、本当に素晴らしかった!
もちろん役者たちが演じているとわかっているのに、どんどん実の親子にしか見えなくなっていきました。くだらないことでケンカをする姉と弟の関係性もすごくリアル。
通常の映画やドラマなら回想シーンですませるところを、この作品では本当に年月をかけて撮っているんですよね。だからこそふとしたシーンでも、役者たちの豊かな表情が撮れたんだろうな、と思わされました。
私の経験を振り返ってみると、ドラマ『黒革の手帖』を撮ったのが約10年前。同じチームでドラマを作り続けていますが、どうしても人の入れ替わりがあります。
だから『6才のボクが、大人になるまで。』のプロジェクトがどれくらいチャレンジングなことか、よくわかるんです。監督、スタッフ、出演者、みんなが揃ってよく根気強く何年も撮影を続けることができたなぁ、と舞台裏のストーリーに感動し、主人公一家が経験する出会いと別れに感動し……。
大学に進学する息子との別れを前にお母さんが言う、「人生ってもっと長いと思っていた」というセリフには本当に泣かされました。
このページは、女性誌「FRaU」(2015年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。
『6才のボクが、大人になるまで。』
離婚した母の大学進学に伴って、姉とともにテキサスからヒューストンに引っ越してきた6歳のメイソン。離れて暮らす父との交流や新しい家族、はじめての恋や夢を描き出す。12年間にわたって撮影したフィルムを2時間45分の映画にした、リチャード・リンクレイター監督の異色作。時間の恵みを感じる、奇跡の瞬間がきらめく。