米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。
周りの人たちから「すごくよかった!」という評判がたくさん届いて、興味を持った韓国映画『国際市場で逢いましょう』。主人公一家のビジュアルがあまり美しくないため(笑)、最初は腰が引けしまった私。でも時代に翻弄されながらも何とか生き抜こうとした主人公や家族たちの物語を観ているうちに、どんどん引き込まれていきました。
描かれるのは、朝鮮戦争で父と妹と生き別れ、叔母が営む釜山の国際市場の店に母と弟妹と一緒に身を寄せたドクスの人生。ドイツの炭鉱への出稼ぎやベトナム戦争といったつらいシーンを観ながら、韓国にも貧しくて大変な時代があったんだなとしみじみ感じました。
この映画のよさは、そんな過酷な体験を描きながらも、どこかユーモアがあるところ。ドクスも家族に苦労は見せず、楽観的に生きているように振る舞う人なんですよね。
戦争で片脚を失ってまで働いているのに、一緒に住んでいる妹たちはわがままで、あまり苦労をわかってくれない。思わず、妹、もっとしっかりして! と叱りたくなったほどです(笑)。
生き別れになるシーンでは、私が出演したドラマ『ハルとナツ 届かなかった手紙』を思い出すところも。
メインの役者さんはもちろん、脇役の方たちがいい味を出しているのも、この映画のおすすめポイントです。ドクスのいつも明るい親友役の人は何度も笑わせてくれたし、ベトナム戦争のシーンでは東方神起のユンホさんが、短いながらも見せ場のあるいい役を演じていますよ。
スタイリッシュなところはまったくなし、そういう意味では期待値を上げすぎずに観てほしい韓国映画。家族の関係、親子や夫婦の愛、友情や戦争のこと、アジア人が共感しやすい、幅広い層におすすめしたい作品です。
このページは、女性誌「FRaU」(2015年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。
『国際市場で逢いましょう』
朝鮮戦争で父と妹と生き別れ、残された家族とともに、釜山の国際市場へとやってきたドクス。やがてドイツの炭鉱への出稼ぎやベトナム戦争といった過酷な経験が彼を待っていた。韓国で国民的ヒットを記録した、『フォレスト・ガンプ/一期一会』を思わせる笑いと涙のエンターテイメント。