こんにちは。
先日のヨシタケシンスケさんの『ころべばいいのに』には、たくさんの方から反響をいただき、絵本をチェックされている方も多いんだなあと思いました。私はしばらく絵本や児童書から離れてしまっていましたが、ここにきて絵本ブームが到来しています^^

私の中の絵本ブームが再燃したきっかけは、ブックホテル「箱根本箱」で懐かしい絵本をたくさん読み返したことです。

ライブラリーとホテルが一体型になった宿泊施設「箱根本箱」は、吹き抜けの本棚等があり、お子さんが走り回ると危険なところもあるので、小学高学年以下のお子さんは宿泊が制限されています。(「こども本箱」という特別なイベントの日は開放しているそう)。

基本は、大人の方にゆったりと静かに本を楽しんでもらう空間づくりとなっていて、部屋にテレビもなく、館内のBGMもなくとても静かです。

ショップの奥に大人のための絵本のコーナーが。

ところどころにこじんまりした読書スペースもあります。
絵本のコーナー。

うわぁ〜〜懐かしい!と思わず手に取って読み返してみたら、子どもの時に読んだ印象、弟が小さかった時に読み聞かせで読んだ時の印象とまた全然違った3作品がこちら。

てぶくろ
エウゲーニー・M・ラチョフ (イラスト), うちだ りさこ (翻訳)

 

ウクライナの民話だったんですねえ。

おじいさんが落としたてぶくろの中で動物たちが暮らすお話。梯子をつけて窓もつけて、ワイワイ楽しく暮らしていた(今で言う所のシェアハウス&DIY!)ところ、てぶくろが発見されてしまいあえなく解散に。
「いれて」「どうぞ」とどんどんウェルカムなシェアハウス。うさぎとかえるといのししと・・・めちゃダイバーシティ!! しかし最後はユートピア、楽しい時代はそう長くは続かない・・・みたいな現実を突きつけられる哀しみも感じました。 



どろんこハリー
ジーン・ジオン  (著), マーガレット・ブロイ・グレアム (イラスト), わたなべ しげお (翻訳)

 

お風呂が大嫌いなハリー。私の幼い記憶では「お風呂にちゃんと入れよっていう説教くさい話」というイメージがうっすら残っていたのですが・・・(汗)。白に黒ぶちのハリー、どろんこになって黒に白ぶちになったら誰にも気づいてもらえない。自分だと気づいてもらおうといろいろアピールするハリー。

これは、外見とアイデンティティ、自分とは何で判断されるのか?みたいな話なんじゃないだろうかと思いました。もしかしたら外見差別的なニュアンスも。違う見た目で帰ったら家族が受け入れてくれないってなかなか残酷なお話ですよね。帰ればお風呂に入れるあったかい家族があるっていいね、というだけの話じゃなかったのかもしれません。

ハリーのシリーズは、『ハリーのセーター』、『うみべのハリー』などどれもちょっと家族の怖い部分、残酷なところが描かれている気がします。

 『しろいうさぎとくろいうさぎ
ガース・ウイリアムズ (著, イラスト), まつおか きょうこ (翻訳)

 

しろいうさぎとくろいうさぎが結婚をする。結婚式のカードのモチーフやウェルカムボードなどにも使われるハッピーエンドなお話。

仲良く楽しく遊んでいる間、くろいうさぎが度々暗い顔をして塞ぎこむので、心配になったしろいうさぎが「どうしたの?」と聞くと、いつまでもきみと一緒にいたいと願い事をしている、と答えるくろいうさぎ。そして二人はめでたく結ばれるのですが、あらためて読んでみると、ずいぶん大人っぽい表現だなあと思います。

くろいうさぎは単なる片思いにしては終始深刻すぎるし、しろいうさぎが鈍感さ奔放さも無邪気というには無自覚すぎやしないかしら。

刊行された1965年のアメリカ南部の一部では、異人種結婚と深読みして図書館に置くことを禁止されたりもしたと言います。作者本人は、そういう意味合いは否定しているようですが、原題は『The Rabbits' Wedding』、『しろいうさぎとくろいうさぎ』という名タイトルは、翻訳家の松岡享子さんが考案されたそう。邦題の方がずっといいけれど、Black & Whiteとうたわなかったのかもしれませんね。

人種や国籍に限らず、身分の違い、お家柄の違い、想像される結婚してから苦労・・・楽しく一緒にいられる時間が永遠ではないことをくろいうさぎだけが予感していることなど、深読みするとなんと切ない物語なのでしょう。

そうそう、この箱根本箱滞在時に『モモ』も読んで、新たな発見が多数あったのですが、長くなってしまったので次回に(汗)。
「箱根本箱」へ誘ってくださったのはフードディレクターの川上ミホさん。本読み、マンガ読みのミホさん♡ 今日のコラムではおすすめの「食マンガ」をご紹介くださっています。ぜひこちらもチェックしてください。

大人の深読み絵本、またご紹介しますね。
ではではまた〜。