大森、ミモレ最後の置き土産!? 岡本仁&敬子『今日の買い物』発売決定!
雑誌が超絶元気だった80年代後半から90年代前半に私は思春期を過ごしました。緑が多い山間の盆地に生まれ育ち、いつでも「ここではないどこかへ」と願っていた多感な私は、悶々とした気持ちを抱えたまま雑誌を眺めては、その中の世界に没頭する時間が好きでした。中学、高校の頃から、お小遣いは雑誌や本、そして洋服に使っていたような気がします。
私に雑誌編集者を目指させた男、岡本仁
その時々で私をワクワクさせてくれる雑誌というのがあって、大学生時代に楽しんでいた雑誌のひとつが『relax』でした。誌面から自由なムードがムンムンと漂ってきて、それまで漠然と「雑誌の編集って楽しそう」と思っていた私が、「雑誌編集者になりたい!」と強く思うキッカケになった雑誌だったように思います。その頃の『relax』編集長が岡本仁さんでした。
つまり、今、私が編集者として働いていることに、岡本仁さんは少しだけ責任があるとすら思っています(笑)。
私におしゃれの楽しさを再確認させた女、岡本敬子
私がミモレの編集長に就任する際、大草直子編集長時代にミモレが提案していたファッションの概念に、まったく違う文脈から風穴を開けてくれる方を探していました。「おしゃれする」という私たちの中にある固定概念を拡張してくれる方を。「ちょっと私には理解不能だわ」と敬遠する読者の方がいてもいいくらいのインパクトがある方を。とにもかくにも「おしゃれする」ことは義務ではなく、私たちの権利だと全身で謳歌している方を……。真っ先に頭に浮かんだのが岡本敬子さんでした。
ミモレへの参加を口説くためにお会いした時、敬子さんは「私、全然ミモレっぽくないけれど」と私に言いました。「いや、だからいいんです!」。その後、思いっきり熱く、「なぜ、あなたがミモレに必要なのか」を語りまくりました。そして、異性にもしたことのない(いや、本当に笑!)全身全霊のラブコールを送り続け、晴れてミモレにご登場いただけることに。
仁さんと敬子さんはご夫婦です。
私の編集者人生にとって、それぞれ意味深いおふたりが以前に発売されていた、そして、絶版になってしまっていた共著『今日の買い物。』(2005年)。この一冊をできるだけたくさんの方にお読みいただきたくて、新装版をミモレから発売する運びとなりました(このような書籍をつくるセンスに長けた先輩に甚大なるご協力を仰ぎつつ! もう足を向けては寝られません!!)。
買い物は人生です。
私たちは日々の“今日の買い物”たちに囲まれて暮らしています。せっかくならば「どうして無性に惹かれちゃうんだろう」なアイテムに囲まれて生きていきたいと思うのは私だけでしょうか?
ファッションだけではなく、何気なく口にする食べ物も、部屋にそっと飾る置き物も……。ただ生きていくだけなら必要ないかもしれないけれど、確実に自分たちをご機嫌にしてくれるものの目利きをしていく岡本夫妻の買い物ストーリー。「コレを買うべき」という情報で溢れてかえってしまったこの時代に、ポトリと一石を投じる思いで、この一冊を再び世に放ちます。
これが、私の正真正銘(!?)ミモレでの最後のお仕事です! ぜひ、この私の暑苦しさを信じて、お手にとっていただけたら嬉しいです。
『今日の買い物[新装版]』
岡本 仁 岡本 敬子 著
買い物は店へのエールである。今はもう失われてしまった店の記憶や、変わらぬ老舗の味。スタイルのある洋服やアクセサリー、そして古びないプロダクトデザイン。今日もまた、いろいろなものを縦横無尽に買い物する2人の、もの選びのセンスとは? ものを選ぶことが仕事でもある編集者岡本仁+ファッションディレクター岡本敬子の大人気買い物エッセイ、新装版が登場! (解説・平野紗季子)
※9月26日発売予定(予約受付中)
大森 葉子
1974年生まれ。95年婦人画報社(現ハースト婦人画報社)、2000年講談社入社。 「with」「gli (グリ)」「GLAMOROUS(グラマラス)」の美容、読み物記事を担当。ミモレには立ち上げから参加、2018年7月1日から2019年6月末までミモレ編集長。
ブログ▶続・今日のツレヅレ
instagram▶yokomorix