この夏は、海外からのお客さまがあった。

フランス人と結婚した友人と、その夫と2人の子供。他の友人家族も招いたので、子供の多い会と見込んで、沢山のジュースを用意しておいた。

が、その予想は、大きく外れてしまい、炭酸ジュースが苦手な子供がいたし、まだ4歳のおチビちゃんは、「おみず!おみず!」とせがむものだから、コップ一杯の水を汲みに、何度も台所を行き来するのだった。

会が終わって、皆が帰られた後、そういえば、3年くらい前に、気に入ったワインボトルをカラフェ代わりにして、ガラス作家さんのボトル栓をして、得意げに水を出していたことを思い出した。その夏の終わりには、「しばらくお役目は終わり!」と、食器棚の奥に仕舞ったまま、忘れてしまっていたのだった。

「あ~、これでお出ししたら、心置きなく"おみず"を飲んでいただけたのに……」と悔しくてならない。

ベルギーのムッシューも言っていた。

「レストランには、"l'eau de vie(命の水)"という言葉があって、決して、お客様のグラスを空にしてはいけないよ」と。お客様の水のグラスやワイングラスを満たすことは、言葉がおぼつかなくても、お客様をよく観察していればできる、新米お給仕の初歩的なお役目だった。

そんな初歩的な”もてなし”を、4歳のおチビちゃんに教えられた、大切な会だった。

 

◯今日のカラフェ・・・黄色の綺麗なイタリアワインの空き瓶と、ガラス作家の横山秀樹さんのボトル栓(料理家の細川亜衣さんのご提案でできたもの)。

写真:白石和弘