MB ファッションバイヤー、ブロガー、作家、アドバイザー。ブログや書籍、メルマガ、セミナー等で伝えている「最速でおしゃれに見せる方法」によって、「人生が変わった」という男性が続出。おしゃれを論理的に教えるサイト、『ノウアーマグ』のほか、氏が主催するオンラインサロン『MBラボ』は、日本最大のメンズファッションコミュニティとして各方面から注目を浴びている。また、日本最大のメルマガ配信スタンド、「まぐまぐ」で毎週5万字にも及ぶメルマガを配信し、現在メルマガランキングで人気第2位を獲得。書籍『最速でおしゃれに見せる方法』、漫画『服を着るならこんなふうに』など、関連書籍は累計100万部を突破。2019年9月26日には新著『もっと幸せに働こう 持たざる者に贈る新しい仕事術』が発売したばかり。


“おしゃれ”という主観と感覚で判断されがちなものを、理論的でわかりやすいセオリーを立て、明確な言葉にし、男性ファッションの底上げをしているカリスマメンズバイヤーMBさん。ふだんは男性のおしゃれについて語られているMBさんですが、実は女性にも役立つ、興味深い理論をたくさんおもちなんです。今回は、人気のファストブランドを独自の目線で斬り、より効率よく活用するためのテクニックを教わります。

 


ファストブランドには、それぞれの強みや特徴があります

 

たとえばユニクロでは長く使うベーシックアイテムを。トレンドに手を出したいならザラ。このように、それぞれのファストブランドの強みを知って、使い分けることはとても理にかなっていると思うんです。実際僕自身は、ベーシックなユニクロをベースに、ザラをときどきつまむ、くらいの感じで活用しています。
 

ユニクロは驚くほど上質な素材のベーシックアイテムが安く買えるのが強み


ユニクロは、商品の企画が始まり、実際に店頭に並ぶまでは1年がかり。だから、型数を圧倒的に少なくし、ひとつの型をたくさん売る戦略にしています。1型で1億枚くらいつくっているアイテムもあるほどで、生地を大量に仕入れられるから、凄まじく上質な素材なのに手ごろな価格というマジックが実現します。

ユニクロは、ずっと長く着られる上質な服=“ライフウエア”をコンセプトにしていますが、カシミアニット、スーピマコットンカットソー、エアリズム、ヒートテック…などがまさに好例。毎年数ミリ、1cm単位で微調整をしながらも、10年スパンのような長いくくりで、ずっと同じようなアイテムを販売しています。

一方で、子どもからお年寄りまで、万人が着られるような服をつくらなければならない使命もあるため、トレンドは盛り込みにくいというデメリットも。ベーシックなアイテムゆえ、普通にそのまま着ていたのでは、周りの人と差別化するのが難しい。

なので、ユニクロで買ったベーシックなアイテムを着て、それを“ただの普通の人”に見せないためには、どうやって着たら今っぽく見えるか、というひと工夫が必要です。

たとえば、シンプルな白Tシャツ×黒パンツを選ぶなら、ワンサイズ上げるのか、ジャストサイズでいくのか、着るときにはトップスはタックインするのか、しないのか、ウエストをブラウジングするのか、袖は折り返すのか…。ここを熟考してください。

毎年改良しながら同じようなものを出し続けているアイテムの中でも特に感動したのが、ユニクロのインナーソックスです。ユニクロのインナーソックスは、これまでも毎シーズン買っていました。でも、やっぱり数千円するけど、某インポートブランドのものが、素材もいいし、脱げにくいし、結局はそれがいちばんだなと思っていて。それが、ある年から、ユニクロのインナーソックスの方がまさるようになったんです。同じ「インナーソックス」という名称で毎年販売していたとしても、決して去年とは同じものを出すことはせず、1cmでも1mmでも微調整をし続け、よりよいものをつくっていこうとするユニクロの姿勢はさすがだなと思いました。たった390円のソックスでも手を抜かないって、本当にすごいです。 ベリーショートソックス¥390(ユニクロ)


ザラはもの自体で分かりやすくトレンドを表現するブランド


一方、ザラはユニクロとは正反対の性質をもつブランド。買った服をそのままパッと着るだけで、今っぽく見えるパワーをもつ服=ザラ。毎週ショップを訪れても、店頭に並ぶ商品が様変わりしてしまうくらいのスピード感もあります。その理由は、企画から店頭に並ぶまで、たった3週間という短い期間でできてしまうから。このスピード感で、今着たいトレンドを盛り込んだ服を、ひと型あたりの数は積まずに、型数の豊富さで勝負しています。H&Mも同じカテゴリに属しますね。だから、今っぽく見えるもの、トレンドっぽいものが着たいなと思ったら、便利なブランドです。
 

国の文化がファストブランドのものづくりにも影響を与えている!

 

では、そもそもユニクロとザラにはなぜこのような違いがあるんだと思いますか。

それは、ユニクロとザラが、それぞれの国の洋服文化の元に成り立っているから。ヨーロッパでは洋服が人とかぶること=おしゃれの価値が落ちることを意味します。人と違うことが大事、みんなと違うものを着るのがファッションの醍醐味、と感じるアイデンティティがあります。だから、トレンドを楽しみ、飽和したらまた次のトレンドへ移行していくのです。

一方、日本はもともと和服文化でしたよね。着物のデザインは基本的にひとつ。同じ形。着物に帯に帯締めに…使うアイテムも変わりません。代わりに、染め・織り・素材で自分らしさを表現していました。だから、ユニクロのように素材でよいものを提供するのは、まさに日本らしいなと思います。

さて、ファストブランドに話を戻します。


GUはしっかりと探せば、大人が使えるものが見つかります


GUは若者向けブランドというイメージがある人も多いと思いますが、実はちゃんと探せば、大人にも使いやすいよいアイテムが見つかるんです。僕はとってもよいスーツを発見しました。ほかには、靴もとってもおすすめ。今季から「GUシューズラボ」というプロジェクトを立ち上げたようで、靴のクッション性が上がり、デザインだけでなく、履き心地にも満足できるようになりました。ただ、全身をGUにしてしまうと、若者っぽく見えてしまうので、過剰に取り入れないことがコツです。
 

話題のワークマンは基本は作業着。たまにとんでもなくすごい逸品が!


最近ではワークマンも話題になっていますよね。ワークマンのものづくりは、ユニクロに近いものがあります。全国に800店舗あり、1型10万着ロットがベース。だから、ユニクロと同じく、量産できるぶん、よい素材や機能をもったものを安くつくれるのがメリット。ただユニクロと違うのは、おしゃれなファッションウエアとしてつくっているのではなく、このショップのメインターゲットである作業員の方に役にたつ服である必要があるので、あくまで作業着、日常着として使えるものしかつくらないということ。その中でときどき、作業員の方にも、おしゃれを求めている方にも、両方にとって魅力的なヒットアイテムが出てくるんです。

わかりやすいアイテムでいうと、マウンテンパーカ。風を通さず、蒸れず、見た目もイケていて、ファッションブランドで買ったら、2万円はしてもおかしくないレベルのものが、たった3〜4千円で買えるのがすごい。プロ仕様だから、オイルの上を歩いても滑らない靴なんかも売っていて。見た目の作業靴感が減れば、妊婦さんやお母さんによい商品だろうなぁ、ちょっと惜しいなぁという気持ちで見ています。

取材・文・構成/川良咲子、高橋香奈子

 

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