③ ほっこり大きな栗が入った老舗の「栗蒸し羊羹」
こちらを初めていただいたのは30年ほど前、栗のお菓子の特集で。どなたのご推薦だったか……。なんだか地味なお菓子だなと思ったのが第一印象でしたが、竹皮の包みをはがして羊羹を切ると、見事に大きな栗の断面が顔を出します。
一口食べてみると、なんのなんの、ほのかな竹の香りが立ちのぼり、葛を加えて蒸し上げた薄墨色の餡にはもっちりとした独得の歯ごたえが。あっさりと品のいい甘さが口の中に広がり、ほっこりとくずれた栗が香ばしさを添えます。
鮮度のよいうちに蜜漬けされた徳島産の栗蜜漬を使用しているのだそう。そのしっとり感がたまりません。
「松葉屋」の菓子造りは江戸の末期、嘉永五年に加賀の名刹那谷寺の門前にて、寺侍那谷吉兵衛が羊羹を商ったのに始まります。明治維新の頃に、小松城下に移り、以来160余年。5代にわたり、のれんが守り継がれているのです。
菓名は、良寛さんの「月よみの 光を待ちて 帰りませ 山路は 栗の いがの多きに」の歌からとったものだそう。意味は、「月の光を待って帰りなさい、山道は栗の毬がたくさん落ちてて危ないから」、とのこと。なんとも風流です。
「松葉屋」
石川県小松市大文字町69
tel. 0761-22-0120
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