31米倉涼子×西田敏行対談「父親より親戚のおじさんみたいな存在」

お互いを尊敬している、
だから撮影が楽しい

西田 『ドクターＸ』の撮影はいつも本当に楽しいから、誰も楽屋に戻らないんだよね。

米倉 廊下にいすを置いて、待ち時間にずーっとしゃべっているくらい仲良し。白衣のポケットに、食べかけのお菓子が入っていることもありますよね（笑）。

西田 いつもおいしいものがたくさん揃っているから、太るのだけが困るんだよ（笑）。涼子ちゃんが背筋を伸ばして凜として元気に「おはようございます！」ってスタジオに入って来るだけで、俺たちを牽引している座長だな、といつも感じています。

米倉 私は何もやっていないけど、みんながお互いを尊敬しあえている現場なんですよね。

西田 最終回の撮影のあとのあいさつのときに、ひとりひとりに感謝を伝えたいけどうまく言葉が出てこなくて大粒の涙をポロポロ流しているのを見ても本当にかわいくて、親戚のおじさんの心境になっちゃうんだよね（笑）。

米倉 私のなかには、同じメンバーで違うドラマをやってみたいっていう夢もあります。

西田 たとえばヤクザの情婦から弁護士になった、実在の人をモデルにした作品はどう？

米倉 もう弁護士は遠慮しておきます（笑）。やっぱり私に求められるのは強い女の人なのかなぁ。

西田 ソフィア・ローレンの『ひまわり』の日本版みたいな作品もいいかもしれない。俺もあの頃のマストロヤンニくらい若かったら共演できるんだけど（笑）。きっとこれから先、涼子ちゃんはもっといろいろな役が演じられるようになると思いますよ。

米倉 そうだといいなと思っているけど、どうしたらいいんだろう。

西田 若い世代が台頭してきているなかで鮮度をキープできているのは、自分自身に枷（かせ）をかけて、いろいろな思いを背負って頑張っているからだと思う。『ＣＨＩＣＡＧＯ』もしかりスペイン語もしかり、新しく開拓していく表現者としての精神を持っているからね。だからきっとこれから先、ますます幅が広がってくるはずです。

米倉 幅って一番難しい……。

＜米倉さん着用クレジット＞
ジャケット ¥22000／UNITED TOKYO（ユナイテッドトウキョウ 新丸ビル店） タイ付きブラウス ¥23000／Sov.（フィルム） 白パンツ¥75000／DEREK LAM（ブランドニュース） 靴 ¥79000／Sergio Rossi（セルジオ ロッシカスタマーサービス） ピアス¥2170000／DAMIANI（ダミアーニ）

西田 最初に言ったように、涼子ちゃんは10あるとして４、５くらいにしか自分を評価しないでしょ。伸びしろを自分で設定して、挑戦する姿勢が本当に素晴らしい。この世界には満たされちゃっている人、たくさんいますからね（笑）。まだまだって思えるってことは、可能性があるってことなんです。やっぱり、周りからどんなに立派だと言われてもすぐにうなずかないのが涼子ちゃんのすごさ。自分が満足するってことは、生涯のうちにないのかもしれない。

米倉 でもその気持ちは、西田さんも同じですよね？

西田 そうね。もの作りに関わる人のある種の性（さが）だと思うし、自分にもそういうところがあります。でも涼子ちゃんほど自己評価を低くは設定していなくて、今は10のうち７か８くらいだな、って思ってきたタイプだね（笑）。

米倉 西田さんのように長くお芝居をしていきたいけれど、何年も先のことは考えられない。

西田 今、目の前のことをやった先に続いていくものだからね。節目でピリオドを打つ必要はないんじゃないかな、と思いますよ。

米倉 すごく励みになる言葉です。これから先も西田さんとご一緒できるように頑張ります。