透明感あふれる筆致で、男女の枠にとらわれない恋愛や人間模様を描いてきた大人気漫画家・志村貴子さん。名作BLも、女子高を舞台にした百合作品も自由自在に世に送り出してきた志村さんが、ついに満を持して「大人の女性」が主人公の百合作品を発表! これが本当にたまらなくイイ。ご本人からもコメントをいただいております♡

おとなになっても(1) (KC KISS)主人公は小学校の先生をしている既婚者の「綾乃」(カバー右)。行きつけのバーで、同性愛者「朱里」(カバー左)に声をかけられ、意気投合、そのままお持ち帰り(?)コースに! 最初に積極的だったのは朱里なんですけど、一見奥手でマジメに見えた綾乃の人間度量と天然人たらしっぷりがすごいんです!!
 

 主人公「綾乃」は教職についている35歳。仕事終わりに行きつけのバーで、隣り合わせた同性愛者の「朱里」と意気投合、その(とっても自然な)流れで、あれよあれよという間に、朱里の部屋へ…! 
「え? 女性同士の不倫ストーリー?」と思わずカテゴライズしてしまった方、それが全く違うのです。
 志村さんの画面&構成力により、時間はゆったりとまったりと美しく流れていき、ドロ沼でもなく、登場人物も健全でヘルシーな印象でさえあるということの驚き。あまりにもスムースな展開で心地よく読み進めるうちに、眼前には美しいキスシーン…。

もう
終電ないけど
どーすんの


えー…
いつのまに……


タクる?
それとも
うち すぐ そこだから
寄ってく?


寄ってっちゃおうかなあ…

いいよ

(中略)

はじめて
会った人と…
こんなの
はじめて



このセリフを志村さんにしか描けない雄弁な眼差しと、匠のコマ割りで味わえます♡ 

 少々酔ってはいるけど、いたってマジメで健康的で美しい女性2人による”恋に落ちていくトーク”、ザワザワザワが止まりません! 1話目にして、久しぶりに胸騒ぎを味わえること、確約いたします。それに、思わず「ズルい人ね…!」と言いたくなるほどに、綾乃の天然人たらしっぷり(連呼)がすごい。モテる人っていうのはこういうことをいうのかしら? 

 綾乃に悪気はないものの、後日、夫を連れて朱里のいるバーへ飲みに行き、「綾乃/夫/朱里」の三角関係が表面化。綾乃はまっとうな性格ではあるけれど、妙に大胆かつ常識にしばられない存在として描かれています。自分の気持ちに正直であると言えますが、読み進めるうちに、つい綾乃の夫に同情してしまうシーンも……でも、このあたりの読み応えったらないのです! 作者の志村さんは、この展開について、

「初回の打ち合わせで、一話目のプロットはこのときにほとんど出来ました。細かい肉付けなどはネームに入ってようやく頭を悩ませましたが、ネーム前の段階で一話目がスパッと決まることはこれまでほとんど無かったので、このときばかりはほんの少しだけ手応えを感じられました」

作者の方が手ごたえを感じられたシーンって、やはり読み応えも別格だなぁと実感した次第です。

女子高を舞台にした『青い花』(全8巻)の発表を経て、「大人の百合モノをちょうど描きたかった」という志村さん。

 
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