女優、ミュージシャン、そして近年はレトロワグラース代表としても活躍している柴咲コウさん。昨年に芸能生活20周年を迎え、その節目に2冊の本を出版されました。1冊はPHOTO BOOK『THE KO 柴咲コウ photo book』、そしてもう一冊は自身の暮らしにフォーカスした『LIFE THE KO 生きるを活かす9のこと』。どちらかというとあまりプライベートがわからないミステリアスなイメージのある彼女ですが、今回の本を作るにあたっての思い、そして現在の心境をお話いただきました。
ワクワクするようなことがきっかけで、環境についても考えてもらえたらと思い本を出版しました
もともとは私のインスタグラムを見て興味を持った編集の方からお声がけいただいて、ライフスタイル本を出版しようという所から始まったんです。今回写真集になった部分もその本に収録する予定だったのですが、実際に撮影をしたら、1冊に収まらないくらいの量があったので、2冊に分けて出版することになりました。
本を出そうと思ったいちばんの動機は、30代以降、環境への意識が高まって、ただおしゃれな生活や自分だけ豊かな暮らしというのは、本当の豊かさではないなという思いが強くなってきたからなんです。でも、環境問題ってなかなか知る機会がないし、”臭いものには蓋をしろ”ではないですが、見えづらいんですよね。それに、こうじゃなくちゃいけない、と押し付けるのも違う。そう考えたときに、私自身が楽しみながら日々の暮らしの中でしていることを伝えて、それを通して少しずつでも環境問題に興味を持ってくれる人が増えてくれるなら嬉しいと思いました。
2016年に立ち上げた「Les Trois Graces(レトロワグラース)」という会社も思いは同じで、ワクワクとともに環境のことをもっと楽しく伝えられたらいいなと思って立ち上げました。現在は人の欲求や楽しさに直結するアパレルのプロダクト制作と、自身のコンサート主催等のエンタメ制作を行っています。
製品を手に取るきっかけは、“なんかいいな”とか“可愛いな”でもいいんです。そこから実際に触れたり、袖を通したときに、心地良いと感じてくれて、“これは何で出来ているの?”と関心を持ってもらうことが大切かな、と思っています。
私自身は東京生まれの東京育ちで、あまり自然に縁のない生活環境だったんですが、小学生の頃、静岡に住む父の友人家族の家に、夏休みの間“ホームステイ”させてもらっていたんです。毎年、ひとりで高速バスに乗って訪ねていました。田んぼもあって、あぜ道があって、山に行くと渓流があってそこで魚釣りをして。思い返してみると映画『おもひでぽろぽろ』の主人公みたいな気分でしたね。この時に豊かな自然にふれた経験が、後の環境問題に興味を持つきっかけになったのかもしれません。
「若いころだったら見せつけているみたいで嫌でしたが、年を重ねもういいかな、と自宅での撮影もしました」
ライフスタイル本『LIFE THE KO 生きるを活かす9のこと』は、おもに自宅で撮影しています。もし20代の頃だったら、自宅を公開するなんて、”見せつけているみたいで嫌だな”と断っていたと思います。でも、今回は“年を重ね、そろそろいいかな”と受けることができました。
年を重ねるにつれやっといろいろな面でバランスが取れてきたなと自分でも実感しています。仕事を始めたばかりの20代前半のころまでは、自分を守るのに必死で、人に対して殻や壁を作っていたこともありました。自分の理想があっても、まわりと折り合いがつかず、差を感じることも。
でも、最近は自分が丸くなったのか、相手の意図を汲み取れるようになってきたからなのかはわからないんですけれど、そう感じることも少なくなりましたね。自己主張して、それが通ったとしても、周囲が納得していないなら、それは幸せじゃないなと今は思うようになりました。まず周りとの調和を考えるようになったんでしょうね。
女優、歌手、会社経営、と今は“三足のわらじ”です。二足までは周りから“大変じゃない?”とかよく聞かれましたが、三足になるとあまり何も言われなくなります(笑)。三足とも周りにいる方たちも違うし、求められることもまったく違うから面白いんですよね。私の性格として、何かひとつに100%と振り切れないんです。たとえば色なら原色も好きだしアースカラーも好き。刺激も静けさもどっちも好き。仕事はもちろん、あらゆることで違うエッセンスがあってこそ、お互いが生きると思うんですよね。
「会社にいるときは率先して“備品係”。じっとしているのが苦手なんです」
柴咲コウ 1981年生まれ。デビュー以来、映画、TVドラマ等、つねに人気作品に出演。並行して歌手としても活躍。2016年には、自身が代表を務めるレトロワグラースを設立。2018年に、環境省より「環境特別広報大使」に任命される。2019年は『LIFE THE KO 生きるを生かす9のこと』『THE KO 柴咲コウ photo book』(共にPARCO出版)を出版。2020年は出演映画『燃えよ剣』が公開予定。
会社経営は、女優や歌手の仕事とは違って、組織を形成し、どのように事業を推進していくかのか判断をする立場。というと偉そうですが、会社にいるときは率先して”備品係”をすることも。何かを考える合間に、社内の備品を整理するのが息抜きなんです。こう見えて、整理整頓が得意なんですよ。子供の頃は、お道具箱にいかにきれいに詰められるかが楽しくて。それと同じ感覚で、毎年おせちも作っています。だから私の場合、料理を作るのは助走で、重箱に詰めるのがメイン(笑)。
ボックスや棚などもちょうどいいものを見つけるのが得意です。基本的にネットショッピングですが、ぴったりくるものが見つかるまで粘り強く検索したり、実際に現物を探しに行ったりします。本の中でも整理については紹介してますが、整っていると、すぐにものが見つかるので、無駄なものを買わなくていいからエコなんですよね。
本の中では、衣食住に加えて、家族にむかえた保護猫のこと、日本各地のおすすめの温泉地など、さまざまな角度から、私の生活を綴っています。どこかひとつでも読んでくださった方の心にひっかかり、環境を考えたり、アクションを起こすきっかけになったらいいなと思っています。
<新刊情報>
『THE KO 柴咲コウ photo book』
柴咲コウ 著 網中健太 写真 定価1700円(税別) PARCO出版
昨年芸能生活20周年を迎えた柴咲コウの「今」を、あますことなく切り取った完全撮り下ろし写真集! ドレス姿でのスタイリッシュでクールな表情の写真からTシャツ姿での無邪気な笑顔まで。柴咲コウの魅力が存分に詰まった1冊。
『LIFE THE KO 生きるを活かす9のこと』
柴咲コウ 著 定価1600円(税別) PARCO出版
「暮らすこと」「作ること」「出会うこと」そして今思うこと。柴咲コウ、初のフォト&エッセイ! 収納や掃除のこと、お気に入りの料理、美の秘訣、大好きな猫との時間まで……。女優・柴咲コウが日々の暮らしの中で思うこと、そして今伝えたいことを、自らの言葉で綴ったライフスタイルブック。
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