どんな女性が素敵かは、自分の物差しで決めればいい
映画には何度か、ブルーアワーの青い世界の中で、キヨを連れだってはしゃぐ幼い頃の砂田が登場します。あの頃は「何者かわからない自分」を楽しむことができたのにーーその事実は、映画を見る人の胸に小さなとげのように刺さります。
「子供の頃って、ちゃんとした大人になった自分を思い描いていたけれど、実際はそんなふうにはなれていない。でも本来は“こうじゃなきゃいけない”なんてないと思うんですよね。私は20代後半ですけど、30歳までに結婚しなきゃいけない、なんてこともない、そんなことは自分が選べばいいことであって。こうだから立派とか、こうだから素敵とか、世間がいう通りにできているかどうかなんてどうでもいい。それこそ女性がこうあるべき、女性らしく、みたいなことも色々言われていますが、そんなこと自分の物差しで決めていいと思うんです」
ではご自身が決める「自分」とはどんなものでしょうかーーそう聞くと、夏帆さんは「ああ、でもそれもちょっと違うのかも」と少し戸惑ったように答えます。
「“こうでなきゃいけない”ということにとらわれすぎてしまうと、すごく窮屈だと思うんです。こうありたいなっていうのはもちろんあるんですけれどーーごめんなさい、ちょっと話していたらよくわからなくなってきました(笑)」
止められずに過ぎて行く時間の中で感じる焦燥感は、自分の中にもあるーーインタビューの冒頭に夏帆さんから出た言葉がよみがえります。
「この映画って、登場人物が女の子二人だから、女の子特有のモヤモヤを描いた映画と思われてしまいがちなんですが、そうではないと思うんです。きっとそれは誰もが抱える葛藤で、そういうなかで、その先をどうやって生きていくのか。私自身は、その年齢をありのままに生きてゆくことが大事なのかなと思っているんです。この役が今の年齢の私にしかできなかったように、30代になればその年齢にしかできない役があると思う。その時に私が30代なりの気持ちをちゃんと感じられるよう、目の前にあることをちゃんと積み上げていきたいなと思います」
女優・夏帆(kaho) 1991年6月30日生まれ、東京都出身。2007年、初主演映画『天然コケッコー』での演技により、日本アカデミー賞、報知映画賞、ヨコハマ映画祭などで新人賞を受賞。おもな映画出演作に、『箱入り息子の恋』、『海街diary』、『ピンクとグレー』、『友罪』、『きばいやんせ!私』。テレビドラマ出演作に、「ヒトリシズカ」、「みんな!エスパーだよ!」、「予兆 散歩する侵略者」、「白い巨塔」、「いだてん~東京オリムピック噺~」、「アフロ田中」など多数。10月から放送の日本テレビ「ニッポンノワール-刑事Yの反乱-」、テレビ東京「ひとりキャンプで食って寝る」に出演。清純派のヒロインからシリアスな役まで幅広く演じ、映画ファンを魅了し続けている。
<映画紹介>
『ブルーアワーにぶっ飛ばす』
10月11日(金)テアトル新宿、ユーロスペースほか、全国順次公開!
いつの間にか大人になってしまった全ての人たちへ贈る、
新たな日本映画の傑作!
30歳の自称売れっ子CMディレクター・砂田は、東京で日々仕事に明け暮れながらも、理解ある優しい夫もいて満ち足りた日々を送っている…ようにみえるが、口 をひらけば悪態をつき、なにかあれば毒づいてばかりで心は完全に荒みきっている。
ある日、病気の祖母を見舞うため、砂田は彼女のコンプレックスの根源である大嫌いな故郷に帰ることに。 ついて来たのは、自由で天真爛漫な秘密の友だち清浦。砂田は幼い頃、夜明け前に清浦と出会い、砂田が困った時には必ず清浦が現れてそばにいてくれた。しかし、故郷で2人を待ち受けていたのは、愛想は良いが愚痴っぽい母、骨董マニアで自分勝手な父、引きこもりがちで不気味な兄…再会した家族の前では、都会で身に着けた砂田の理論武装は全く通用しない…
やがて全てを剥がされた時、見ようとしなかった本当の自分が顔を出す―。そして夕暮れに差し掛かる時間、清浦との別れが迫っていた…。 こんにちは、本当の自分。さようなら、なりたかったもう 一人の私―。
出演:夏帆、シム・ウンギョン、渡辺大知、黒田大輔、上杉美風、小野敦子、嶋田久作、伊藤沙莉、高山のえみ、ユースケ・サンタマリア、でんでん、南果歩
監督・脚本:箱田優子
製作:中西一雄
企画・プロデュース:遠山大輔
プロデューサー:星野秀樹
音楽:松崎ナオ
製作:「ブルーアワーにぶっ飛ばす」製作委員会
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント
制作プロダクション:ツインズジャパン
配給:ビターズ・エンド
2019年/日本/カラー/アメリカンビスタ/DCP5.1ch/92分
公式サイト:http://blue-hour.jp
©2019「ブルーアワーにぶっ飛ばす」製作委員会
スタイリング/清水奈緒美
ヘア&メイク/石川奈緒記
取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)
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