タレントの小林麻耶さんが、読者の方と「ほっとできる時間」を共有したい、そんな気持ちでお送りする連載です。

今回は、著書『嫌われる勇気』がベストセラーになったアドラー心理学の第一人者で哲学者の岸見一郎さんとの対談です。
小林さんもこの著書の大ファン。これまで何度か対談されている仲だそうですが、この度約3年ぶりに岸見さんとの再会が実現しました。

小林さんからは結婚の報告、岸見さんからはこの3年間、苦悩する小林さんを見ながら伝えたいと思っていたことなど、胸の内を語り尽くした、その内容とは?
 

 

岸見一郎 1956年、京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(古賀史健と共著、ダイヤモンド社)、『人生を変える勇気』(中央公論新社)『よく生きるために働くということ』(KKベストセラーズ)など多数。公式ツイッター:@kishimi 公式インスタグラム:@kishimi 公式HP:https://kishimi.com/
 

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前回記事「 結婚できたのは「愛する勇気」のおかげ【小林麻耶さん×岸見一郎さん対談】」はこちら>>

 


大事なのは「このままの私でいいんだ」と思えること


小林 アドラーは、決心さえすればどんな悩みに対しても「今、この瞬間から変われる」と言っていますよね。

岸見 おっしゃる通りで、例えば自分が愛する決心をすることだったら、誰でも今この瞬間からできますよね。多くの若い人は、「相手がいない、だから結婚できない」と言いますけど、あれは本当は違うのです。相手がいないということを理由にしているだけ。本当はいるはずなのです。

私も、「職場に男性が全然いない」という相談を受けることはよくあります。でも、通勤途上でもどこでも、いろいろ出会っているはずです。愛する技術を知っている人であれば、どの人とでも関係は築ける。その中でも、「この人とだったら生きていける」と思える人に、きっと出会えるのです。そしてその相手は、愛される努力をしていたときに探していた相手とは明らかに違うと思います。

小林 夫は、“頑張らなくていい”と思えた初めての人です。そういう点では違いますね。これをしたらもっと好きになってもらえるかもしれないとか、それこそ嫌われないようにこれをしないでおこう、とかそういう細胞が全く働かない。目的が何もないというか、ただ自分のままでいられるんです。

岸見 小林さんが「このままの私でいいんだ」と思えることが大事です。恋愛以外の対人関係では、やはり自分を良く見せないといけないものです。それによってお金を得たりしますから。そういうことを考えなくていい、普通にしていられる、というのが最善のパートナーなのです。

小林 そうですね、“普通であることの勇気”というのも、大きな提示でした。例えば恋愛においては、歴代の彼女の中で上位にいたいとか(笑)そこまで意識はしていなくても、無意識でも、どこか優位をつけたくなってしまうことがありました。普通であるということは、難しかったです。

岸見 平凡であれというのではなくて、ありのままの自分を受け入れる勇気です。しかし誰しも小さい頃から、「特別良くなれ」と教え込まれているのです。
具体的に言うと、子供に「いい成績をとりなさい」「いい学校に行きなさい」と言うのもそう。私たちはその頃から、他者の期待を満たすために生きてきました。背伸びをして、自分を大きく見せようとして。
でも「この人の前ではそういう努力をしなくていい」と思えただけでこんなにラクなんだ、と思える人。そういう人とだったら一緒に生きていこうと思える、“愛する”とはそんな感じです。

小林 はい、何も背伸びすることなく、自由で、ありのままでいられます。今までの恋愛では、勝手に自分が頑張り過ぎていただけ。相手の問題ではないんですよね。「嫌われたくない」とか、「もっと好きになってもらいたい」とか、“愛されたい”という発信をしていたのだと思います。