少子化は日本だけではない。アジアの各都市で超低出生率が進む理由_img0
 

日本でもこの傾向はあり、日本の場合は背景に「男性が稼ぎ主で、女性は専業主婦として家を支えるべき」という規範、そしてそれを前提とした社会の仕組みがあります。女性自身がそれを望んでいるといった意識面もさることながら、家庭で女性に求められる役割が大きく、その反面で労働市場では男女賃金格差があり、女性が経済的に自立したりキャリアを築いたりするうえで壁が多いことが、さらにその規範や仕組みを強化しています。一方で男性の非正規雇用者も増え、収入は下がりつつある……。このような中ではなかなか上昇婚が実現できない、ゆえに結婚そのものが減っているという解釈ができます。

 

シンガポールでは女性の管理職比率は3割程度で、1割強の日本よりは男女格差はマシとは言えます。 それでも「キャリアを緩めて、子どもに時間をかける」という発想はやはり女性に強く、家庭を持つことが仕事とトレードオフになるという認識が見られます。所得が多ければ住み込みメイドを雇うという選択肢もあるのですが、そのマネジメントや子どもの教育は結局多くの家庭で母親の役割になっているようです。

シンガポールの低出生率の背景には、未婚化・晩婚化だけではなく、既婚者が子どもを増やさないこともあります。それについてはまた機会があれば詳しく書きたいですが、簡潔に言えば子育てにお金がかかること、子どもを増やすと仕事が続けられなくなるかもしれないと躊躇する女性が多いことであり、これは結婚する際に上昇婚を志向してしまう理由と重なる面もありそうです。

今の若い世代では、共働きがほぼ前提になっているシンガポールですら、やはり残る男女格差とそれが遠因となった少子化。シンガポールの場合は教育の競争が激しく、その責任が母親に求められてしまう側面も大きな課題なのですが、 一見、子育てに優しそうに見える社会でも、男性が家庭での役割をもっと果たすこと、そして女性がキャリア形成できる環境は、まだまだ必要なのだなと感じます。
 

(参考文献)
Jones.G.W.,2012, Population Policy in a Prosperous City-State: Dilemmas for Singapore, Poplulation and Development Review,38(2):pp.311-336.
落合恵美子・山根真理・宮坂靖子編『アジアの家族とジェンダー』勁草書房 
Koh E.C.2010,Will Singapore’s Fertility Rise in the Near Future?,Asian Population Studies,6:1,pp.69-82.
NUS,2013,IPS Perception of Policies in Singapore(POPS)Survey6:Perception of Singles on Marriage and Having Children,
G. Jones, P. T. Straughan, & A. Chan (Eds.), Ultra-low fertility in Pacific Asia: Trends, causes and policy issues, Routledge ,Oxon

 

前回記事「アラフォー女性の「熟年離婚」願望。「実は、今、考えてる」」はこちら>>

 
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