先週観てから、ずっと書きたくて、でも言葉にするのが難しくて引き延ばしていた、映画「Joker」のこと。

10月5日、英・ロンドンで行われたイベントの様子。 写真:REX/アフロ

まず、普段の私の好みとしては、「水戸黄門」のように勧善懲悪でわかりやすいハッピーエンドの作品が好き。観ていてわくわくしたり、元気になったりする映画が好きなので、どう考えても鬱映画としか思えない話題作「Joker」は、いつもなら観に行くことも考えなかったはずなのです。

 

それが公開後、日本でも2週連続で観客動員数1位となるなど予想外の大ヒット。「なぜそんな暗くて地味そうな鬱映画が日本で今、流行っているのだろう?」という理由が知りたくて、映画館に足を運んで参りました。

結論からいうと、劇場の大画面で観ることができて良かった。そして、観た後に必ず、誰かと感想を語り合いたくなる映画だな、と。

メディアでもすでにたくさんの方達によるレビューが書かれていますが、私なりに、この映画の魅力をお伝えしたいと思います。(※ネタバレあり。未見の方はご注意ください)

まず、ストーリーとしては、アメコミ史上最悪のヴィラン(悪役)と言われる「ジョーカー」がいかにして誕生したか、という内容。貧しく恵まれない環境で生きてきた主人公・アーサーが、ちょっとした、不運なボタンの掛け違いからダークサイドに堕ち、悪の化身「ジョーカー」として覚醒(?)していく。その様子を、ホアキン・フェニックスが演じています。

病弱な母親と貧しいふたり暮らしで、ピエロを演じて生計を立てているアーサー。人々を笑顔にするコメディアンになるのが夢なのに、昔受けた脳の障害から、緊張や悲しみを感じるとおかしくもない場面で笑いの発作が起きてしまうという、致命的なハンディキャップを抱えています(コメディアンがおかしくもないシーンで舞台で自ら笑ってしまったら、観客はドン引きですよね)。

そもそもの設定自体が〝悪いジョーク〟みたいな彼が縋っていたそのささやかな希望のすべてまでもが打ち砕かれていく、聞くだけでも「胸糞悪くなるような」ストーリー。なんですが。

たしかに暴力的なシーンも多いし、救いようがない内容なのに、なぜか、絶望的な気分にはならなかったのです。

観る前の私の予想としては、
・観た後どよ〜〜〜んと落ち込むような鬱スートーリーで、
・「これならジョーカーが悪に走っても仕方ないよね」と共感させるようなお涙頂戴系映画

だと思っていたのですが、完全に予想が裏切られた結果となりました。

これはなぜなのか? というところから、映画を考察してみたいと思います(前置き長っっ!!)。

・ホアキンの演技力とトッド・フィリップス監督の力量がすごい!
巷でも話題になっている、「ジョーカー」でのホアキンの演技力。私も圧倒されました。レディース・デーでほぼ満席だったため、最前列で観たということもあり、120分ほぼ全部、ホアキンとサシで向き合わされるような圧迫感(笑)。

ベネチア国際映画祭のときはタキシードでスーツイケメンぶりを発揮していたホアキンが、この映画ではイケメンオーラを完璧に消し去り、痩せさらばえたキモいオッさんになりきっているというか、もうアーサーにしか見えない。

そしてアーサーの、悲しいのに脳障害のために引き起こる発作による「泣き笑い」の顔。あの演技を観るためだけでも、この映画を観て損はないと言い切れます。この映画の成功は、ホアキンがこの難しい表情を作れるかどうかにかかっていると言っても過言ではないため、ホアキン自身、最初にオファーを受けたときは自信がなくて何度も断ったという、難しい演技。

アーサーが完全にジョーカーに生まれ変わったときに見せる、階段でのダンスシーンも、クセになる気持ち悪さ(褒めてます)。肩をそびやかして踊る姿には、本当は皆に注目されたかった虚栄心やナルシシズムが見事に表現されているよう。とにかく、ホアキンの演技に釘付けになり続ける120分でした。

 
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