――お金に対する価値観も、大きく変わりそうですね。
柴山:まさに、学んだことの3つ目が、お金に対する価値観です。
お金はなければ困るけれど、たくさんありすぎてもいいわけではない。お金はすごく大切ですが、「世の中から必要とされること」が伴わないと辛い。両方が大切だと気づきました。
超ドン底のときの私は、お金がないことよりも、世の中から求められていないと感じることの方が、もっと辛かったんですよね。
その思いから、仕事をするうえでも、世の中に貢献する事業をつくっていきたいという思いがより一層強くなりました。世の中に役立っている仕事なら、資本主義の世の中では、後からお金として返ってきます。例えばある商品があって、それを手に取って喜ぶ人がいるからこそ、値段がつき、買ってもらえるわけです。それが、一番大切なことなのだと思いました。
「お金はあとからついてくる」と、気づいたことは大きいですね。
――お金だけに振り回されると、自分の人生を見誤ってしまいそうですものね。
柴山:自分が必要とするお金と、持っているお金とのギャップが「余裕」になりますよね。自分が必要とするお金が多すぎると、いくら働いても、いくら貯金ができても「余裕」が生まれない。満足感はいつまでたっても得られないんです。
収入が高くても、全然貯金ができないと嘆く方もいらっしゃるでしょう。
私はマッキンゼーを退職して、世帯収入が3分の1になっても、自分の生活で最低限必要な額がわかっていたので、大丈夫でした。そうでないと、高収入の仕事をずっと続けていかなくてはならなかったと思います。
人によって必要なお金は違います。心が満たされるために、どれだけのお金、そしてどんな環境が必要かも一人ひとり違うんですよね。
「本当の豊かさとは何か」「自分にとって大切なものは何か」を、じっくり考えるようになりました。
撮影/山本遼
構成/片岡千晶(編集部)
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