憧れの会社で就業体験(インターンシップ)できると思っていたら、対応してくれた人は社員ではなかった、という記事が話題となっています。
人手不足が深刻なことから、企業側がインターンの対応を代行業者に丸投げしていることが背景にあるようですが、この話はインターンシップだけにとどまるものではありません。日本の職場では、本来の目的と手段を取り違えるケースが多く、これが職場の生産性を著しく下げています。

 

近年、新卒採用において、いきなり入社試験を行うのではなく、まずはインターンとして企業の現場に入ってもらい、実際の仕事を体験させる制度を導入する企業が増えています。
就職説明会だけでは表面的な説明に終始してしまいますが、実際に職場を体験すれば、社風や仕事の内容もよく理解できるようになるはずです。学生にとっては企業選びがしやすくなりますし、企業側も、入社後に新入社員が「イメージとは違った」といった理由で退職されてしまうリスクを減らすことができます。

つまり、インターンシップというのは、学生、企業ともにメリットがある制度だからこそ、導入が進められてきたはずですが、現実はそうでもなかったようです。

このところ人手不足が深刻になっていることもあり、企業側はインターンシップに負担を感じるようになってきました。インターンシップの大半が1日で終了する短期型になっているそうですが、1日では、十分に仕事や社風を理解するのは難しいでしょう。それでも、実際に社員と合い、将来取り組むであろう仕事を少しでも体験できれば、学生にとって貴重な判断材料となるはずです。

ところが、一部の企業ではこうした業務を外部にアウトソーシングしており、社員ではない人が社員として学生の対応を行っています。それだけでなく、本来は存在しないインターン用の仕事がわざわざ作られ、学生はそれをこなしているだけというケースが増えているそうです(つまり入社しても、体験した仕事は存在しない)。
そもそも企業モラル的に、このやり方にはかなりの問題があると思いますが、筆者がここで指摘したいのは、モラルではありません。

先ほども説明したように、この制度は、企業と学生のミスマッチを減らすために導入されました。しかし、その業務を外部に丸投げしてしまっては、企業と学生のミスマッチを減らすという本来の目的を達成することはできません。つまり、本来の目的を達成できないにもかかわらず、わざわざ外部の企業にお金を払って業務を委託しているという状況そのものに問題があると主張したいのです。

インターンは事実上のゼロ次面接になっていることも多いですから、採用試験の一貫として実施しているのだという主張もあるかもしれませんが、そうであるならば、わざわざインターンシップの形式にする必要もないでしょう。やはり一連の仕組みには無理があると考えた方が自然です。 

 
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