役者たちの“はじめの一歩”に観客も胸が熱くなる


さらに、2.5次元舞台には「俳優の成長を見守る楽しさ」もあると言います。

松田 今は必ずしもそれだけとは限らないんですけど、若い俳優が多い分、公演を重ねるごとにどんどん経験を積んで成長していく過程を見られるのも2.5次元舞台の面白さのひとつ。作品を楽しむことはもちろんなんですけど、応援できる俳優を見つける楽しさもあるのかなと思います。

たとえば、一歩役の後藤さんは今作で本格的なデビューを飾ります。

後藤 もともと自分が表舞台に立つなんて考えてもいなかったんです。中学のときに妹が「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」に勝手に応募して。それがきっかけで今の事務所にスカウトしてもらったんですけど、はじめはなんとなくっていう感じで。お芝居のレッスンを受けるうちに、どんどん面白くなっていって、お芝居で食べていけたらと考えるようになりました。

【後藤恭路&松田凌】2.5次元舞台の魅力は「生ならではの熱さと原作愛」_img0
 

まだ実績のない中、大作の看板を背負うプレッシャーは並大抵ではありません。そんな後輩に松田さんは人一倍温かな視線を向けます。なぜなら松田さん自身も2012年、ミュージカル『薄桜鬼』で初舞台にして初主演を務めました。かつて自分も近い境遇にいたからこそ、今の後藤さんの気持ちがよくわかると共感を寄せます。

 

松田 初舞台のときは自分が思っているよりも速いスピードでどんどんいろんなことが動いていって。気づいたらもう本番っていう感じでした。本番中はできない自分が悔しくて、20歳の大人が恥ずかしながら毎日幕が閉じるたびにメイク室に駆け込んで泣いていました。

後藤 ……不安です。

松田 (後藤さんの肩を抱くようにして)ごめんやで、恭路。ビビらせるつもりはないんやけど。

後藤 やっぱりつらかったですか?

松田 つらかった……。でも、そんな自分を支えてくれたのが、共演者のみんなだった。ものすごく怖かったけど、仲間が一緒にいてくれたから負けずにいられた。だから、今度は僕の番。エラそうなこと言うわけじゃなくて、同じような経験をしているからこそ、恭路の気持ちをわかってあげられると思う。今回の僕の仕事は不安な恭路の背中を押すことだし、しんどいときは一緒に肩を組める人であることだと思ってる。

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後藤 心強いです……!

松田 それが、今回僕が出演する意味だから。それに、今から終わった時のことを言うのも違うかもしれないけど、きっとこの作品を走り終えたとき、びっくりするぐらい違う世界が恭路を待っていると思う。クサい言い方だけど、この作品が恭路にとっての“はじめの一歩”。僕はその一歩を支えたいし、そのためだったら何でもするから。

後藤 カッコいい……。ありがとうございます!


最強のライバルたちと、いざ勝負のリングへ


劇中、一歩の前には様々なライバルが登場します。おふたりにとって、今、「ライバル」という言葉を聞いて浮かぶ相手は誰でしょうか。

後藤 自分です。僕、ずっと「最強になりたい」と思っていて。何をもって最強というのかわからないですけど、とにかくいちばん強い男になりたいっていう気持ちが強いんです。

松田 僕も小学校の卒業文集に「すごいやつになりたい」って書いたんですよ。今回は、最強になりたい男と、すごいやつになりたい男の戦いだ(笑)。

後藤 はい! 中学から毎日体を鍛えてて。今もジムに通ってベンチプレスを上げたりしているんですけど、まだ90kgしか上げられなくて……。

松田 90kg上げるってすごいよ。嘘だろ……(唖然)。
 

【後藤恭路&松田凌】2.5次元舞台の魅力は「生ならではの熱さと原作愛」_img2
 

後藤 目標は100kgです。でも自分に甘いところがあるから、甘い気持ちに負けないように。ライバルは自分だっていつも自分に言い聞かせています。

松田 じゃあ僕のライバルは恭路だ。原石のような恭路と、まだ8年目ですけど、少しは経験を積んできた僕がぶつかり合ったときに何が生まれるのか。それをお客さんには楽しんでほしいです。ライバルというより、好敵手かな。ちゃんと力を合わせつつ、舞台の上では本気で拳を交えて殴り合えたら。

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漫画の世界がどう演劇に変換されるのか。その楽しみはもちろんのこと、後藤さんの原石の輝き、松田さんとの死闘の行方が加わって、予測不能の化学反応を生み出すのが、2.5次元舞台の面白さ。生身の人間だから演じられる熱いドラマが、劇場を勝負のリングに変えようとしています。

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<公演紹介>
リアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!!

「週刊少年マガジン」にて連載中の、森川ジョージによる人気ボクシング漫画「はじめの一歩」が、連載30周年を記念して初の舞台化。内気でいじめられっ子の幕之内一歩は、ひょんなことからボクシングに出会い、たちまち熱中。「強いってどういうことだろう?」という素朴な疑問を抱きながら、持ち前の努力とハードパンチを武器に、ボクシングで頂点を目指していく。

公演期間:2020年1月31日(金)~2月9日(日)
劇場:品川プリンスホテル ステラボール
原作:森川ジョージ「はじめの一歩」(講談社「週刊少年マガジン」連載)
作・演出:喜安浩平
音楽:和田俊輔
振付:HIDALI
ファイトコーディネイト:冨田昌則
CAST:後藤恭路(幕之内一歩役)、滝澤 諒(宮田一郎役)、松田 凌(千堂武士役) ほか
チケット料金:8000 円(全席指定・税込)
一般発売日:2019年12月22日(日)10:00~
監修:講談社(「週刊少年マガジン」編集部)

撮影/塚田亮平
取材・文/横川良明
ヘアメイク/山崎順子
構成/山崎 恵
 
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