柴山:資産運用を始めるときの注意点3つ目は、「特定の資産に集中しないこと」です。

 

私も過去に何度か失敗したことがありますが、流行している金融商品に「有名だから」と、つい飛びつきがちです。しかし、人気の商品やサービスを提供する企業の株だとしても、もっと早い時期から将来性を見込んでいる人がたくさん投資していて、すでに割高になっているケースもあるでしょう。

流行のもの・有名なものに飛びつき、集中的にお金を投資することはリスクが高く、もし失敗してしまったら大きな痛手です。

資産運用の世界的なスタンダードは「長期・積み立て・分散」なのです。
 

――「長期・積み立て・分散」、しっかりメモしておきます!

柴山:この3点は投資の基本です。

特にお伝えしたいのは「分散」です。ここで言う分散とは、いくつかの株に分散するといったものではなく、世界全体への分散です。もし投資先を分散しておけば、何かうまくいかなくても、別のものがうまくいく可能性があります。投資にはリスクはどうしてもありますが、分散させることでリスクをコントロールすることはできます。

さらに、長期で積み立てていくことができれば、時期によるリスクを下げることができます。少ない資金で投資を始め、余裕が出てきたら投資にまわすお金を少しずつ増やしていくのもいいでしょう。

――世界的なスタンダードの逆、「流行や人気に飛びつき、集中してしまう」ことで失敗する人が多いのでしょうか?

柴山:はい、「投資に失敗しました」という体験談は、特定のものに集中して投資しているケースがほとんどですよね。「借金までして買ったのに、暴落してどうしよう……」と。
そんなセンセーショナルな情報を見ると、「投資は怖い」と思う人がいても無理はありません。

でも、リーマンショックで一時的に大きく資産が減ったとしても、「長期・積み立て・分散」を意識して世界全体に投資していたならば、数年で資産が戻ったケースが多いのです。10年ほどあれば大多数の人が戻っています。

――じっくり腰を据えて投資することが大切ですね。

柴山:長期というのは、1つの目安が10年ほど。金融庁はもう少し長く、15~20年といっています。長ければ長いほどリスクを抑えられるのでいいですね。
30~50代の方なら、退職までに20年程度あります。それなら十分「長期」で運用することができます。

――「相場」は自分の力でどうにもできませんが、「投資をする時間」は自分で選べますものね。

 

柴山:はい、早く始めれば、それだけ長い時間を投資に充てることができます。

これらの3つの注意点は、私自身、20代の頃に何度か失敗してたどり着いた結論でもあります。
有名だからといって、アメリカの大企業の株価が天井だったときに買い、3割近く下落して、怖くなって売ってしまった経験もあります。そのまま長期で持っていれば、10年ほどで4倍になっていたはずなんですけど、そううまくはいかないものです(笑)。

自分自身が小さな失敗をたくさん重ねたことで、世界的なスタンダードである「長期・積み立て・分散」の大切さに気付くことができました。
 

文/西山美紀
撮影/山本遼
構成/片岡千晶(編集部)

 

前回記事「お金持ちがそうでない人の差が開く単純な理由【ウェルスナビ・柴山和久さん】」はこちら>>

 
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