「お金持ちは、お金についてどんなふうに考えているの?どうつきあっているの?」というミモレ編集部の疑問から生まれたインタビュー企画。マネー業界のトップの方々に「お金持ちのお金の価値観」についてじっくり伺っていきます。
皆さん、ロボアドバイザーという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
今回は日本で最も大きな規模のロボアドバイザーによる投資サービスを運営している「ウェルスナビ」代表の柴山さんに、マネーコラムニストの西山美紀と編集部の片岡が話を伺いました。

<今回お話を伺ったのは……>

 

柴山和久さん
「ウェルスナビ」代表取締役CEO。9年間、日英の財務省で、予算・税制・金融・国際交渉に従事。2010年より5年間、マッキンゼーにおいて主に日本の金融プロジェクトに従事し、ウォール街に本拠を置く資産規模10兆円の機関投資家を1年半サポートした。2015年に起業し現職。2016年、世界水準の資産運用を自動化した「ウェルスナビ」をリリース。東京大学法学部、ハーバード・ロースクール、INSEAD卒業。ニューヨーク州弁護士。

 

――海外では富裕層が「プライベート・バンク」や独立系アドバイザー、そしてロボアドバイザー(全自動の資産運用サービス)など、資産運用をプロに任せることが主流だと伺いました。ではなぜ、日本ではこれほどまでに「資産運用」に遅れてしまったのでしょうか。

柴山和久さん(以下敬称略):海外では「長期・積立・分散」の資産運用が広がっています。しかし日本では、私の両親を見て強く感じますが、そもそも資産運用の必要がなかったからですかね。
それは、終身雇用という制度の影響が大きいと思います。
大昔のアメリカなどではあったかもしれませんが、定年まで勤めあげると大きな退職金がもらえるような制度は、現代では日本くらいではないでしょうか。

2017年の退職金の平均額は大卒の場合、約1800万円です(厚生労働省「就労条件総合調査」(平成30年))。
いわゆる老後2000万円問題は、退職金だけで解決してしまいますよね。しかも、今の老後世代の方は、現役世代の年収の6割ほどの金額を年金として受け取っていますから、お金に困らないわけです。

そうなると、リスクをとって資産運用をしようという気持ちにならないでしょう。ニーズがなければサービスが広がらないので、資産運用が普及していなかったのです。

――今は老後2000万円問題などの話題が出たことなど、30~50代の人はお金の不安が大きくなってきました。

柴山:終身雇用を中心とした社会の仕組みがなくなり、少子高齢化が進み、将来もらえる年金も、今の老後世代よりは少なくなる見込みです。家族の在り方も、おひとりさまが増えるなど大きく変わってきていますよね。

この20年ほどで日本社会全体の構造変化が起き、10年ほど前から終身雇用がなくなるだろうと言われていましたが、経団連の会長が、終身雇用を続けていくのは難しいという旨のコメントを出したのが、ようやく今年、2019年です。

少子高齢化の流れも20年ほど前から言われてきていましたが、ようやく最近になって多くの人が問題意識を感じるようになりました。

資産運用が浸透するのにも同じように時間がかかりますので、地道にと考えています。

 

――「老後資金」という言葉も、そういえばここ最近の言葉ですよね。

柴山:はい、最近多くの方が自分の老後に向き合い始めていますよね。
本来は、収入が少なかったり、貯金が少なかったりする人こそ、資産運用の必要があるんですよ。

――「お金がないから資産運用が怖くてできない」と、一般的には考えてしまいそう!

柴山:そう思われがちですが、私は逆だと思うんですよね。
今は超低金利ですが、富裕層が銀行に貯金しておけば、それなりの利息がつきますから、資産運用をしなくても生活はしていけるんです。

一方で、これから資産をつくっていきたい人こそが、資産運用をすべきだと思うんです。
でも実際は、お金がある人ほど、資産運用をしているのが現状です。

 
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