この原稿を書くために36歳の友人にメールをしたのですが、彼女はたまたま『生理ちゃん』を知らず、漫画をとてもおもしろいといって読んでいました。そのうえで、こんなことも話していました。

 

彼女は小学校4年生と5歳の男児2人を育てる主婦。文字を消している部分は長男の名前が入っていました。つまり夫と息子ふたりという、自分以外生理のこない家庭内で、生理を理解してもらえずもやもやしていたのです。
『生理ちゃん』を一緒に楽しむにはまだ早いかもしれないけれど、これをきっかけに、諦めていた彼女のハートになにかが灯れば嬉しいなと思いました。

あ、あと前段で生理休暇制度の話を書いたことで思い出したことをひとつ。
以前、筆者が勤め人だったとき、女性の先輩から「遅刻します」という旨のメールが部署全員宛に送られてきことがありました。その文面を見たときの衝撃はいまだに心に残っています。

「すいません!!生理痛がひどくて動けず、まだ自宅です。落ち着いたら出社させてください」

小さな部署ではありましたが、その中には男性もいました。でもそのとき私は、「あ、こういうの、アリなんだ」と思えて、とても楽になったことを覚えています。
もちろん「生理を言い訳にしたくない」と考える人もいると思いますし、こういったメールを部署全員に送ることに対して賛否はあると思います。
ただ感じるのは、当事者同士がどうするかで、生理休暇といった制度が本当に制度として活きるところが大いにあるのではないでしょうか。

……と、書きつつ自分は最近、「ミレーナ」という避妊具を入れたため、その影響で生理がなくなりました(※個人差があるので、すべての人に月経がなくなるわけではありません)。
自らの意思で生理ちゃんと話をし、別れを選択することもできる時代でもある……。

己の身体を通じてそんなことも感じた映画体験でありました。

<映画紹介>
『生理ちゃん』

 

第23回手塚治虫文化賞〈短編賞〉を受賞した大人気Web漫画の映画化。シングルファーザーと難しい恋愛中の編集者、青子。そんな青子を眩しそうな視線で見つめるフリーターの清掃員、りほ。青子の妹のひかるは受験生だが、彼氏との距離も縮めたいと考えていた……。
どこにでもいそうな3人の女性たちが、生理ちゃんととともに人生のチャンスとピンチを経験していく。

原作:小山健「生理ちゃん」(ビームコミックス/KADOKAWA刊)/監督:品田俊介/脚本:赤松新
出演:二階堂ふみ、伊藤沙莉、松風理咲、須藤蓮、岡田義徳
公式サイト:https://seirichan.official-movie.com/
ヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次公開/配給:吉本興業
©️吉本興業 ©️小山健/KADOKAWA

構成/片岡千晶(編集部)

 

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著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。人生で最も強く影響を受けた作品は、テレビドラマ『未成年』。

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

 
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