スタイリスト、ミモレコンセプトディレクターの大草直子が着こなしのアイデアや日々の思いを綴ります。

お気に入りのコート。「デ プレ パリ」の1枚。ふっくらとしたウールクレープ素材、クラシカルな大きな襟。ゆったりした袖付けと、膝までの丈。そして、ダスティピンクという色。3年か4年前に買ったものですが、手持ちの中で一番「甘いコート」。

 

この甘い、辛い――もちろん通常は料理の味つけについて使う形容詞ですが、コーディネートやメイク、アイテムそのものをディスクライブするときに使い始めたのが「ヴァンテーヌ」という雑誌です。

「白いレースのブラウスに、ブラウンの紐靴――甘い服に辛い小物を効かせる」
「ピンクのニットにグレーのパンツ――甘い服に辛い色を合わせる」
など、「甘辛」を使うことによって、ファッションが、スタイリングの方法がイメージしやすくなりました。

読者のときに知ったこの言葉。実際に「ヴァンテーヌ」の編集者になってからも、大事に丁寧に使い続けました。そして今も。

例えば「デ プレ パリ」の甘いコート。先ほど挙げた「甘いポイント」以外にも、コクーン型(繭のような丸みのある)シルエットだから、スパイシーなカレーのような(笑)色、そして真四角のフォルムのクロエのバッグで、辛さをトッピング。このひと匙の辛さのおかげで、コートの女性らしさ、可愛らしさが際立ってくるのが好きです。

20代で学んだ「甘辛バランス」、今でも私のおしゃれを導き、ワクワクさせてくれています。

大草 直子

大きな鍵がまたスパイシー。「ABY」というモデル。
タイトルと関係ありませんが、季節や時間によって変わる、壁の影絵。ずっと見ていても飽きません(笑)。

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