ヤフーを運営するZホールディングス(ZHD)とLINEが経営統合することになりました。今回の経営統合は、ネット業界に極めて大きな影響を及ぼすといわれていますが、私たちの実生活という点では、どのような変化がもたらされるのでしょうか。

左から、Zホールディングスの川邊健太郎社長、LINEの出澤剛社長。11月18日に行われた記者発表会にて。 写真:森田直樹/アフロ

よく知られているように、ヤフーは日本最大のポータルサイトであり、圧倒的な知名度を生かして、ヤフーショッピングやヤフオクといったEC事業も展開しています。グループ企業にはオフィス通販のアスクルなどがあり、今年9月にはファッション通販サイトZOZOTOWNを買収して大きな話題となりました。一方、LINEはメッセージアプリを中心に8200万人の利用者を抱えており、今や国民的なサービスとなっています。

 

こうした有名企業2社が経営統合するということで、ネット業界には激震が走ったわけですが、私たちの実生活に最初に影響するのはキャッシュレス決済の分野でしょう。

ヤフーは親会社のソフトバンクと共同で、スマホ決済サービスPayPayを提供しています。ご存知のようにPayPayは「100億円相当あげちゃうキャンペーン」など大々的な宣伝活動を行っており、今のところスマホ決済分野では一歩先を行く状況です。一方、LINEもLINE Payというスマホ決済サービスを提供しており、LINEの顧客基盤の大きさからPayPayのライバルと言われてきました。

スマホ決済分野における有力な2社が統合するわけですから、この分野のシェア争いは、ヤフー・LINE連合が勝利する可能性が高くなったとみてよいでしょう。しかも両社のバックには、巨大な携帯電話会社であるソフトバンクが控えています。今後は、ヤフーやLINEでの買い物には、PayPayとLINE Payが推奨されるようになり、ソフトバンクの携帯サービスとの連携が進み、ポイントも共通化されてくるでしょう。

さらにいうとLINEはコンビニのファミリーマートと提携しており、ファミマのリアル店舗との連携も深めています。ヤフーと統合したことでファミマとの提携がどうなるのかは分かりませんが、もしこの連合にファミマも加わってくると、極めて大きな商圏が成立することになります。日本ではまだ現金派という人も多いと思いますが、一気にキャッシュレス化が進む可能性も出てきたといってよいでしょう。

次の段階は、ヤフーとLINEが共同で開発するアプリです。ヤフーが提供するニュースやショッピング、LINEが提供するメッセージングなど、各種サービスを統合するアプリを開発すれば、日常生活に必要となるすべての機能をひとつのアプリで実現できてしまいます。

こうしたアプリをヤフーとLINEが共同で開発し、ソフトバンクのスマホに最初からインストールしておけば、ソフトバンクグループは利用者の生活をほぼ丸ごと取り込むことができます。利用者側も割り切ってしまえば、あらゆるサービスが簡単に利用できて、支払いもすべて一元化できるわけですから、とても便利です。好き嫌いは分かれるでしょうが、こうしたインフラは今まで存在していませんでしたから、私たちの生活にとっては大きな変化といってよいでしょう。

実は、この話には、さらに先があります。

 
  • 1
  • 2