特定の国からしか外国人がやってこない場合には、その国の料理を出せばよいわけですが、ありとあらゆる国から人がやってくるとなると、どこかで落としどころを見つけ出さなければなりません。グローバル化とIT化は実は連動していますから、今の時代はSNSなどを見れば、どの国の人がどんな料理を食べているのか一目瞭然です。

その結果、西洋料理をベースにしつつも、従来の西洋料理とはまったく異なる、アジア人にも、イスラム圏の人の口にも合う、新しい料理のスタンダードが生まれてきました。今、わたしたちが口にしているのはこうした料理ということになるでしょう。

お店を選べばどこにいても同じような料理が食べられるわけですから、日本は食事が美味しい、外国は食事が不味いという話はあまり意味をなさなくなります。

米・ニューヨークのマーケット内にある“Sushi”カウンター。 写真:Shutterstock

アジアに限定された話ではありますが、やはりグローバル化の影響で、日本の飲食チェーン店が大量出店しており、特にタイなどでは、すべて日本食で通すことも不可能ではありません。ウーバーイーツのような出前サービスも急速に発達していますから、スマホさえあえば、食事で途方に暮れるというケースは少なくなっています。

 

近年、海外で仕事を見つけるなど、日本以外に活路を見いだそうという人も増えていますが、一方で「外国は食事が美味しくない」というかつての印象を引きずったまま、最初から否定的なスタンスの人も少なくありません。食をめぐる状況は大きく変わっていますから、こうした理由で海外での機会を閉ざしているのだとすると、それはもったいないことだと思います。

「食」のグローバルな統一化が進み、海外に行って食事に困るケースが減っているということは、「日本の食事は最高」という常識が崩れつつあるということの裏返しでもあります。

確かに寿司や蕎麦は日本で食べるのがもっとも美味しいに決まっているわけですが、これらは日本人にとってのソウルフードですから美味しいのは当然のことです。米国人にハンバーガーやアップルパイを日本で食べるのと米国で食べるのとどちらが美味しいかと聞けば、米国と答えるのは当たり前でしょう。

ここで重要なのはソウルフードの味ではなく、グローバル化された時代においては、仕事や食事、生活スタイルなどが全世界的に似通ってくるので、個人レベルでも企業レベルでもそれを前提にした行動が求められるということです。

日本国内で外国人に食事を出す場合でも、海外に日本食を売り込む場合でも、こうしたスタンダードを少し意識した方が、ビジネス的にはうまくいきやすいでしょう。
 

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