2019年度 大学入試センター試験での様子。 写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

民間英語試験の導入をめぐって紛糾していた大学入学共通テストについて、民間導入はとりあえず見送られることになりました。大学ごとの個別導入についても、国立大学の8割が採用を見送る決断を行っていますから、この制度については全面的な見直しが求められそうです。

 

これまで行われてきた「大学入試センター試験」(いわゆるセンター試験)に代わり、2020年度からは新しく「大学入学共通テスト」が実施される予定となっています。センター試験は国立大学の基礎学力試験だった共通一次試験を引き継ぐ形で1990年にスタートしましたが、暗記ではなく、思考力や判断力を重視する必要性が高まったことから試験の内容を大きく変更。共通テストとして生まれ変わることになっていました。

新しく実施される共通テストには、当初、民間企業が提供する英語の試験が加わっており、従来とは大きく様変わりしていましたが、受験生とその親の世代以外の関心は低く、あまり話題にはなっていませんでした。新しい英語の試験について多くの人が知るきっかけとなったのは、皮肉なことですが、萩生田文部科学相による失言です。

民間試験が導入されることで、所得が低い世帯の受験生が不利になるという一部からの指摘に対して萩生田氏は「身の丈に合わせて勝負を」と発言し、これが大きな批判を浴びました。萩生田の発言をきっかけに、新しい共通テストに大々的に民間企業が関与していることを多くの人が知る結果となり、今度は制度に対する批判が集中。最終的に政府は2020年度における民間試験の採用を見送ってしまいました。

では、なぜ民間試験が導入されると格差問題が発生すると指摘されているのでしょうか。その理由は、民間試験の実施方法にあるようです。

共通テストにおける英語の科目は、大学入試センターが実施する試験に加えて、民間事業者が運営する試験も受ける仕組みになっていました。受験生は7種類ある民間の試験のどれかを選択し、4月から12月までの間に2回、試験を受けることができます。試験の結果は大学入試センターが管理し、各大学は入試センターから送られた情報に基づいて合否の判定に利用する算段でした。

しかし、この英語の試験は営利を目的とした民間企業が実施しますから、タダもしくは実費のみというわけにはいきません。もっとも安いケースでは1回6000円程度ですが、高いものになると2万数千円というケースもあります。また2回まで受けられるルールですから、多くの受験性が2回受験し、よい方の結果を使いたいと考えるはずです。したがって、受験料だけでも最大で5万円の費用がかかる計算になるわけです。

 
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