「金儲け=悪」ではないけれど

 

「ただお金を儲ければいいと考えているのなら、自分のことしか考えていないといわなければなりません」

 

こんな一言とともに、稼げる仕事が自分のやりたいことではない場合、幸福になれるかどうかは考える必要があると、岸見先生は釘を刺します。
では幸せな仕事とは一体、どんなものなのでしょうか。

「幸福につながる仕事とは客の利益になることを目指し、そうすることで客が幸福に生きることに役立てたと思える仕事です。そう思える仕事であればこそ、寝食を忘れて打ち込むことができますし、そのような仕事をしていると幸福になれますが、客に損をさせてでも儲けようと思っていると、たとえ儲かっても幸福であるとは感じられないでしょう」

こう語った岸見先生は、勤め人の場合、所属する会社が社会に貢献しているかどうかもポイントになると指摘。「金儲け=悪」という意味ではなく、個人も会社も、何のためにお金を使うかを考え、一部ではなく、社会全体が幸福になることを考えましょうとアドバイスしていました。

思えば幼い時、友達と将来の夢の話をすると、「みんなが美味しいって言ってくれるパン屋さんがやりたい!」とか、「お母さんが漫画を褒めてくれたから、もっと漫画を書いていろんな人を喜ばせたい」のように、自然と“誰かの喜び”が仕事選びに直結していたような気がします。
また就職活動の際には、社会に対して自分がどのように役に立てるのかと必至に考え、自己PRに励んだ方も多いはず。

なにかと忙しく余裕のない昨今、賃金や売上、ノルマといった目に見える数字ばかりが優先されがちです。
しかし今や人生は100年時代。幸せに働き続けることを考えるためにも、一度初心に戻って自分の仕事を“数字”ではなく、“幸福”の視点から見つめ直してみてはいかがでしょうか。
『哲学人生問答』は、そんな答えのない問いにヒントを与えてくれるはずです。
 

 

『哲学人生問答 17歳の特別教室』
著者:岸見一郎(講談社/税別1300円)
 

学校では教えてくれない本物の知恵を伝える「17歳の特別教室」シリーズ第4弾。「ありのままの自分を受け入れられません」「嫌いな人との付き合いが避けられない時、どうしたらいいでしょうか」など、現役高校生がアドラー心理学で知られる哲学者、岸見一郎先生に本気の質問をぶつけます。
「17歳の特別教室」と銘打ったシリーズですが、大人も子供も目を開かれること必至。一気に読めてしまうほど優しく平易でいて、心にずっと残る言葉がたくさん詰まっています。

 

構成/小泉なつみ

 

第一回「「どうすれば幸せになれるの?」高校生の魂の質問に哲学者の回答は?」はこちら>>

第三回「ベストセラー哲学者の教育法「公式の暗記ではなく“ぼーっ”とさせよ」」は12月22日公開予定です。

 
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