自分の希望や能力を主張できない女性たち。どこまでもつきまとう“罪悪感”


浜田さんはAERA編集長時代、ワーキングマザーに対して、「罪悪感は持たなくていい」ということを伝える特集記事を幾度となく手がけてきました。その一方で、ワーキングマザー以外の部分でも女性には常に“罪悪感”がつきまとっていると感じてきたといいます。

 


「例えば仕事。女性って、私はこれだけ仕事ができますとか、この仕事が好きだって自分から手を挙げないんですよね。男性は上司に直訴してまで希望の部署に異動させろと主張することはあるけど、女性では聞いたことがない。そのことで、女性はたくさんのチャンスを逃してきたんじゃないかと思うんです」

どうして女性は自らの能力をアピールしたり、自分の希望を主張したりすることに引け目や“罪悪感”を感じてしまうのか。浜田さんは、女性の育てられ方に一因があると考えています。

「小さい頃から勉強ができる女の子って好かれはしません。可愛げないと思われるから自分の能力を隠そうとすらします。罪悪感と自信のなさは相関関係があり、多くの女性は自信のないように育てられてきました。私だって自分が管理職になる前は、“2番手の女”でいいと思っていましたから」

浜田さんや少し上の均等法施行と同時に社会人になり、男性社会をかいくぐって今も活躍する女性に目を向けると、何かを諦め、何かを捨てて今の立ち位置を獲得したように見える、と浜田さんは指摘します。

「私が管理職をやってみて感じたのですが、優秀な人が発現する確率は男女でそうは変わりません。全然仕事ができない男性もいるのに、男性は上司の覚えがよくて、人格や能力もそこそこなら、何かを諦めることなく、それなりのポジションをキープできる。でも女性は違う」

このように女性につきまとい続ける“罪悪感”ですが、浜田さんは、本書を出版して、世代差があることにも気づいたそう。

「本のタイトルや内容に対して、『すごくわかります』『泣けてきました』『共感しました』と言ってくれたのはアラフォー以上。一方で、20代の女性には『このタイトルが重い。大変だという話はもう聞きたくないんです』と言われてしまいました」

何かを捨て、何かを諦めてきた女性たち。さらには、既婚か未婚か、子ありか子なしか、正社員か非正規社員か、何歳かで細かく分断されており、女性同士で理解しあえないこともしばしば。女性が“罪悪感”から自由になり、楽しく生きるにはどうすればいのでしょうか? 後編で掘り下げていきます。

 

『働く女子と罪悪感 「こうあるべき」から離れたら、もっと仕事は楽しくなる』

浜田 敬子 著 集英社 ¥1300(税別)

夜討ち朝駆けで常に眠く、男性ばかりの記者クラブで肩身の狭い思いをした新人記者時代。かねてから希望していたAERA編集部に異動後、多くの働く女性を取材し続けてきて、女性であるがゆえの苦労に考えさせられる日々。その後女性初のAERA編集長に就任し、その肩書に戸惑いつつ、管理職の面白さに目覚めるように。一方で結婚、出産、子育ても経験。ニュースの現場が大好きで、50歳でウェブメディアに転職した今も一線で活躍する著者が、後進の女性たちに伝えたいことが詰まった一冊。

撮影/浜村達也(講談社)
取材・文/吉川明子
構成/大森葉子
(この記事は2019年1月29日に掲載されたものです)
 
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