女性誌を中心にフードライターとして活躍しつつ、実はフィギュアスケートの記事も担当している齋藤優子さん。羽生結弦選手や小塚崇彦さんにインタビューしたことも! 今回は全日本選手権のお話を伺いました。お楽しみください!


12月19日(金)~22日(日)、東京 国立代々木競技場 第一体育館で行われた第88回全日本フィギュアスケート選手権2019。女子シングルは紀平梨花選手が初優勝、ペアは三浦璃来/木原龍一組(1組のみの出場)、アイスダンスは小松原美里/ティムコレト組がそれぞれ優勝した。そして、男子シングルは宇野昌磨選手が4連覇、ショートプログラムで首位に立った羽生結弦選手はフリースケーティングで珍しいほどのミスが出て2位。3位には羽生選手より10歳年下の鍵山優真選手が入った。

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台乗りした3選手が四大陸選手権の代表に。世界選手権は、宇野選手、羽生選手と田中刑事選手の3選手。鍵山選手は、佐藤駿選手とともに世界ジュニア選手権にも出場する。写真:田村翔/アフロスポーツ
 


総合芸術としてのフィギュアスケートを垣間見せた、驚愕の15歳。


その鍵山選手のフリースケーティング「タッカー」は、実況の西岡孝洋アナの言葉どおり、まさに「衝撃の4分半!」だった。いや、以前から“トータルパッケージ”の選手だなぁとは思っていたが、これがジュニアの、15歳の演技ですか!? ふつう、もうちょっとツッコミどころ、ないですか!? と、唖然。ある雑誌のインタビューで、「最近、いちばん見ている動画は、町田樹さんの“エデンの東”」と言っていたが、早15歳にして、あの世選エデンの片鱗を見たような……。ロシア女子の例を出すまでもなく、昨今はジュニアのほうが4回転ジャンプを跳べたりするから、ジャンプの難度や高さだけで驚いているわけではない。クワドを装備してなお、スケーティングは滑らかだし、スピンの軸はまったくブレないし、しかも、技術だけってわけでもない。音楽に合わせて、表情もつけ、緩急自在に、タメさえ作って踊っているんだから、おそるべし。しかも、老成したふうではなく、ちゃんとジュニアらしさを漂わせている。実況で、“彼は心から踊っている”というコーチの言葉を引用していて、思わず、テレビの前で首肯したほど。で、「最後に選択したジャンプはっ!?」という実況アナの煽りもなんの、音楽を奏でるようにさらりと難度をあげてトリプルアクセルを決め、フィニッシュ! フリーの得点は宇野選手に次ぐ2位。技術点ではトップのスコアを叩き出し、ジュニアグランプリファイナルで表彰台を逃した悔しさを晴らし、台乗りを果たした。それでいて、そんなに興奮しているふうでもないから頼もしい。全日本ジュニアで優勝した時に号泣していたコーチである父・正和さんのほうが、今回も感極まっている様子だったのは、気のせいか。

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子供のころから踊るのが大好きだったという鍵山優真選手。クワドジャンプをものにして一気に世界へ。目指すは、オリンピックの金メダル。父の正和さんは、'92年アルベールビル、'94年リレハンメル五輪の男子シングル日本代表。写真:田村翔/アフロスポーツ