ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」"最強の挑戦者(チャレンジャー)"

 

こちらも原作は、累計発行部数は3500万部(2019年11月時点)超のバレーボール漫画の金字塔。2020年1月よりTVアニメ『ハイキュー!!』第4期が放送開始。世界各国で熱いファンを増やし続けています。

 

物語の舞台となるのは、かつて強豪と呼ばれた宮城県立烏野高校男子バレーボール部。背は低いけれど天性の身体能力を持つ日向翔陽と、天才と評されながらその強すぎる負けん気のせいでチームメイトから「コート上の王様」と疎まれたセッター・影山飛雄が中心となって、全国大会を目指すというスポーツ漫画らしい熱いストーリーが展開。舞台版も2015年11月からスタートし、すでに通算300回公演を突破する人気シリーズに成長しています。

スポーツは、筋書きのないドラマ。だからこそ、どんな名作も本物のスポーツの感動や衝撃には勝てないと思っていました。そんな先入観を完全に覆してくれたのが、この演劇「ハイキュー!!」です。

舞台でバレーボールをどうやって表現するのか。誰もが抱くそんな疑問を、イノベーティブな映像テクノロジーとアクロバティックな身体パフォーマンスで見事にクリア。趣向を凝らした映像をバックにしながら、若い俳優たちが実際に汗を流し、大きく躍動することで、まるで本当にそこでバレーをしているような感覚に。

この体験は、まさに観劇というより「観戦」。ボールの行方を目で追い、キリキリと胃を痛めるようにしながら勝利を祈る。呼吸もまばたきもできないような緊張状態。対戦校のスパイクが決まれば、思わず両手で顔を覆い、負けた高校が客席に向かって「ありがとうございました」と頭を下げると、まるで自分もチームメイトになったように悔し涙を流しながら拍手を送る。彼らと一緒に青春を追体験しているとしか言いようのない世界が、劇場に広がっているのです。

最新作の"最強の挑戦者(チャレンジャー)"では、いよいよ春高(全日本バレーボール高等学校選手権大会)が開幕! 最高峰の舞台で、烏野高校はどんな試合を見せるのか。忘れていた青春の昂りが、ここにあります。

<公演情報>
原作:古舘春一「ハイキュー!!」(集英社「週刊少年ジャンプ」連載中)
演出・脚本:ウォーリー木下
出演:醍醐虎汰朗、赤名竜之輔 ほか
東京公演:2020年3月21日(土)~3月22日(日)TOKYO DOME CITY HALL
兵庫公演:2020年3月28日(土)~3月29日(日) あましんアルカイックホール
宮城公演:2020年4月4日(土)~4月5日(日)多賀城市民会館 大ホール(多賀城市文化センター内)
福岡公演:2020年4月10日(金)~4月12日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール
大阪公演:2020年4月17日(金)~4月19日(日)大阪メルパルクホール
東京凱旋公演:2020年4月24日(金)~5月6日(水・休)TOKYO DOME CITY HALL
http://www.engeki-haikyu.com/
 

 

■2020年オススメの舞台<ストレートプレイ編>


ストレートプレイとは、歌唱を含まない演劇のことを意味します。よく練り込まれたストーリー展開と洒脱な会話、そして俳優の底力を堪能できるストレートプレイはまさに観劇の醍醐味。今回はそんなストレートプレイから見逃せない3本をご紹介します。

M&Oplaysプロデュース『リムジン』

 

近年、俳優としてどんどん味わいを増している向井理。映像の彼も素敵ですが、個人的に向井理の良さを最も堪能できるのは舞台ではと思っています。その常人離れしたスタイルの良さを生で拝めるありがたみはもちろんのこと、向井理が内包するどこか冷めた空気や乾いた視線は、人物描写が複雑で濃厚な演劇の世界にぴったり。2019年に出演した『美しく青く』では震災により子どもを失った男の弱さと狡さを感傷的になりすぎないリアリティで演じ、新境地を見せてくれました。

そんな向井理が新たに臨む舞台が、この『リムジン』。作・演出を務めるのは倉持裕です。倉持裕といえば、今や演劇界を代表する売れっ子作家。『鎌塚氏、舞い散る』のようなドタバタコメディから、劇団☆新感線に書き下ろした『乱鶯』『けむりの軍団』のようなアクションエンタメ、さらに森山未來の怪演が忘れられない『ネジと紙幣』のような人間の暗部に迫る作品まで、その作風は自由自在。「倉持裕って10人くらいいるんじゃないか…?」と疑いたくなるほど、硬軟様々な作品を発表し続けています。

本作は、些細な嘘が次なる嘘を呼び、主人公が逃げ場のないところまで追いつめられていくさまをブラックな笑いをまじえて描くサスペンス。まだ内容はここまでしか明かされていませんが、主演が向井理で、作・演出が倉持裕なら、もう十分に「買い」でしょう。ライトな層も取り込みつつ、演劇ならではのシュールさも楽しめる1本になりそうです。

<公演情報>
作・演出:倉持裕
出演:向井理、水川あさみ、小松和重、青木さやか、宍戸美和公、田村健太郎、田口トモロヲ
2020年5月〜6月 ※東京、富山、大阪、名古屋、島根、広島、福岡、愛媛、仙台、新潟公演あり
http://www.morisk.com/img/lim.html


横川さんおすすめの舞台紹介、まだまだ続きます!
後編は明日1月4日(土)公開です。どうぞお楽しみに!


文/横川良明
構成/山崎 恵
 

 

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002


前回記事「コーチ不在。宇野昌磨選手に降りかかった孤独な戦い【男子フィギュア】」はこちら>>

著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。18年に大腸がん発見&共存中。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

 
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