ライター横川良明さんがナビゲートする、2020年上半期のおすすめ舞台。後編では、前編に続きストレートプレイ(歌唱が入らない演劇のこと)から2作品を。さらに、個性的な作品が揃う小劇場演劇から2作品をご紹介します!

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シアタークリエ『アルキメデスの大戦』

 

原作者は、『ドラゴン桜』で知られる漫画家・三田紀房。天才数学者の視点から第二次世界大戦を描いた本作は、2019年夏に菅田将暉主演で映画化。スクリーンでこの頭脳戦をご覧になった方も多いのではないでしょうか。

 

数学を偏愛し、軍隊を嫌う変わり者の天才数学者が、巨大戦艦の建造計画を阻止すべく、数学を武器にたったひとりで権力と立ち向かう。その特異でありながらキャッチーなストーリーは、多くの人たちの心を掴みました。


そんな名作が、今度は舞台で登場。天才数学者・櫂 直を演じるのは鈴木拡樹です。鈴木拡樹といえば、前編で紹介した2.5次元舞台の世界でトップを走る超人気俳優。「彼が出演するだけでチケットが取りにくくなる」と囁かれるほど爆発的な人気と確かな演技力の持ち主です。

近年は映像作品での活躍も目立ち、2019年秋に放送されたドラマ『カフカの東京絶望日記』ではネガティブすぎるカフカを妙演。ここで見せた妄執ぶりはどことなく本作の櫂 直にも通じるところがあり、きっと映画に負けない櫂 直像を打ち立ててくれるのではないかと期待が膨らんでいます。

さらに期待感を煽るのが、脚本:古川健×演出:日澤雄介の組み合わせ。ふたりは劇団チョコレートケーキの中心人物で、これまでも史実をベースにした骨太な人間劇で評価を高めてきました。特に絶賛を浴びたのが、「暗愚」として語られることの多い大正天皇の一代記を描いた『治天ノ君』。地上波のドラマでは絶対に扱えないであろうテーマに真正面から挑んだ結果、第21回読売演劇大賞選考委員特別賞を受賞するなど、一躍演劇界にその名を轟かせました。そんな古川×日澤コンビが、3000人以上の死者を出した戦艦大和の悲劇の裏側にどう迫るかは注目度大。

エンタメとしての面白さを味わいつつ、重量級の見応えに骨の髄まで痺れたい人にとってはうってつけの作品と言えるのではないでしょうか。

<公演情報>
原作:三田紀房
脚本:古川健
演出:日澤雄介
出演:鈴木拡樹、宮崎秋人、福本莉子、奥田達士、小須田康人、神保悟志、岡田浩暉 ほか
2020年6月〜7月 シアタークリエ
https://www.tohostage.com/archimedes/


舞台『巌流島』

 

スター俳優のお芝居を生で堪能できるのも観劇の大きな楽しみ。その点から言っても、今最も多くの人が生で観たいと熱望しているであろう旬の若手俳優ふたりが相まみえる2020年最大級に贅沢な舞台が、この『巌流島』です。宮本武蔵役に横浜流星、佐々木小次郎役には伊藤健太郎。もうこの組み合わせだけで、これ以上の見どころは説明不要、というのが正直な気持ちです。

空手の世界大会で優勝経験を誇るなど、高い身体能力で知られる横浜流星が本格殺陣に挑むだけで一見の価値がありますし、『アシガール』の若君で多くの女性を虜にした伊藤健太郎がまた時代劇に挑戦してくれるのもファンにとっては垂涎モノ。おそらくプラチナチケットになることは必至です。

付け加えるならば、脚本のマキノノゾミと企画・製作の日本テレビは、これまでも中村勘九郎主演の舞台『真田十勇士』、上川隆也主演の舞台『魔界転生』とエンタメ時代劇をつくり続けており、本作もその系譜に連なる1本と見て良さそう。前2作はどちらも娯楽性が高く、ケレン味たっぷりの世界で観客を湧かせてくれました。

きっと今回も小難しい要素は一切排除し、徹頭徹尾楽しめる活劇要素の強い作品になるのでは。横浜流星×伊藤健太郎がどんな名勝負を披露してくれるのか。開幕のときを心して待ちたいと思います。

<公演情報>
脚本:マキノノゾミ
演出:山田和也
出演:横浜流星、伊藤健太郎 ほか
2020年7月〜9月 ※東京、大阪、名古屋、福岡で上演
https://ganryujima-stage.jp/
 
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