鈴木さんがやっていた副業は、これまでの経験を活かした調査や資料作成など。しかし、このときの副業経験が次の一歩を踏み出すきっかけになったのだと言います。

「仕事を依頼してくれてきたクライアントの方々に成果物をとても褒めていただけて、それで自分に自信を取り戻すことができました。自己肯定感が上がったと言ってもいいかもしれません。本業である会社員のほうでは思うように仕事ができず、上司との関係も良くならずと自信喪失状態だったので、副業経験は本当に得られたものが多かったです」

 

現在、大手企業でも約半数が副業を認めているとされ(※日経新聞調べ)、副業に対する注目度は年々高まっています。読者の中にも興味がある方は多いのではないでしょうか? 個人から見たときの副業のメリットは複数ありますが、その中の一つが「自分を知る」ということ。会社とは別の場所で活動をすることで、客観的に自分自身を見つめ直すことができ、また自分の強みを再発見することにもつながります。今回はまさにこのパターン。副業で自分の強みを発見し自信を取り戻した鈴木さんは2016年夏には完全に会社員を辞め、フリーランスとして再スタートを切りました。

 

「辞めて1週間でめまいも耳鳴りもゼロになったんです! 辞めること自体に迷いはまったくありませんでした。健康はお金じゃ買えないですから」

さらに退職後Warisに登録し、フリーランスのリサーチャーとして仕事をする中で、鈴木さんに転機が訪れます。知人から急ぎの調査を依頼されたのです。

「一人では対応できそうにない内容だったので、今はもうフリーランスなので難しいです、とお話ししたら『鈴木さん一人でやる必要ないよ。何人か仲間を集めてやってくれればいいから』と言われて。それで友人や知人に声をかけてその案件をやったらできちゃったんです! どこかで、フリーランスって一人で業務を完結しなきゃいけないという思い込みがあったんですよね。その思い込みを取っ払ったら、会社員じゃなくてもチームで仕事ができちゃった」

今は30名以上のフリーランスのリサーチャーを束ねて、チームとして企業から調査案件を請け負うまでになりました。「独立して後悔したことは一度もないです」と話す鈴木さん。生活のバランスが整ったことが一番の喜びだと言います。

「フリーランスなら『何の仕事を、いつ、どこで、誰とするか』自分で決めることができます。今は基本的には毎日9時~17時30分まで仕事をしていて、夜間や土日に仕事をすることはめったにないです。5歳の娘との時間を大切にすることができる。これは何物にも代えがたい喜びです」

会社員時代に始めた副業から自分の強みを発見し、フリーランスへ。そして仲間のフリーランスたちと「チームで働く」という新しい“働き方のかたち”に挑戦中の鈴木さん。働き方のかたちは人それぞれで、人との縁や、時には所属する組織そのものが変化して、というように“流れ”から定まっていくこともあります。既存の考え方にとらわれず「私らしい働き方のかたち」を探ること、いくつになっても大切にしていきたいですね。

前回記事「経理や総務で長年働いてきた私が、40代でベンチャー企業に転職するまで」はこちら>>

 
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