米国の社会学者Caitlyn Collinsが書いた『Making Motherhood Work: How Women Manage Careers and Caregiving』を読みました。スウェーデン、ドイツ、イタリア、米国の中産階級の母親たちにインタビューをしてまとめたものです。各国のワークライフバランスを知るうえでとてもお勧めです。いずれ翻訳が出るかもしれません。

 

まず出てくるのは、スウェーデン。男女平等の役割分担がされ、きちんと家族の時間を優先して早く帰っても不利益を被らないという様相が語られ、褒めすぎじゃないかと感じるほどです。しかしそのあとの章で、苦戦を強いられている他国の母親たちの発言を読んでいくほどに、やはりスウェーデンはかなり理想的だなと感じさせられます。

 

もちろん著者も全てがバラ色な国はないと言っています。スウェーデンでは子どもを長時間預けることがタブー視されているという状況も描かれ、「パーフェクトペアレンツ」へのプレッシャーはあるようです。次に出てくるドイツとともに、長時間労働が不要ゆえに、誰もが濃密な時間を子どもと過ごすべきという強い規範もあるようです。

ドイツについて扱った2・3章では、社会主義だった東ドイツでは働くことが当たり前という意識があるのに対し、西ドイツでは専業主婦規範が強いという国内の違いも描かれています。

東ドイツのベルリンでは良い母親はパートタイムで働くものだという認識や、できるだけ早く迎えに行くのがいいとの規範があり、仕事とのバランスに満足している人は多いようです。ただ、母親がパートタイムを選ぶときにキャリアを追求するのは諦めることでコンフリクトを回避している面はあるようです。

西ドイツでは子どもが小さいと「働く必要あるの?」、何か子どもに問題が起こると「お母さんが働いてるからね」と言われるなど、どこぞの国と同じような圧力も……。家庭での分担は平等ではなく、職場でも女性は子どもができると見下されるといいます。国の政策のみならず、文化的な背景が国際比較、あるいは地域比較の上で重要になってくることがよくわかります。

 
  • 1
  • 2