それでもシムさんは“臭いものに蓋をせず”、ユーモアの力を使った斬新なアプローチでメディアや政治家に働きかけ、2013年7月、国連で「世界トイレの日」を制定させるまでに漕ぎ着けます。

そんなシムさんは今“クリーンな世界”を目指すべく、「フェミニンな社会」の実現を掲げています。
 

「勝ち組」という考え方の限界


世界の富裕層1%の資産が、残り99%の総資産を上回るといういびつな格差社会は「勝ち・負け」ルールによってできており、ほぼ全員が敗者です。
貧しい人たちから搾取し、限りある資源を枯渇させ、破壊していくような「勝者・敗者ロジック」は限界がきているとシムさんは語ります。

こういった価値観を「男性社会」と呼ぶシムさんですが、これは男性が悪者という意味ではなく、女性でも今の男性社会で働き続けると「勝ち・負け」ルールに則った行動を取ってしまうんだとか。

「中年の危機」をきっかけに「トイレ」で世界的社会活動家になった男性の話_img0
 

そんな中、シムさんは「より多くを消費する人が成功者ではなく、より共有する人、より共感する人が成功者」という価値観に変われば、世界は良くなるのではないかと訴えます。
 

 

世界を救うのは「女性的な社会」


自然の仕組みに「勝ち・負け」はありませんし、優劣もありません。そこには無駄やゴミもなく、互いが共鳴し合うことで世界が持続可能になっていくシステムがあります。
「母なる大地」という言葉通り、今後の世界を変えていくために、このような「女性的社会」を目指していこうと語っていました。

駆け足で紹介しましたが、『トイレは世界を救う ミスター・トイレが語る 貧困と世界ウンコ情勢』という本のタイトルから想像もつかない着地点へと誘ってくれるシムさんの著書をぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
 

「中年の危機」をきっかけに「トイレ」で世界的社会活動家になった男性の話_img1
 

『トイレは世界を救う ミスター・トイレが語る 貧困と世界ウンコ情勢』
著者:ジャック・シム/訳:近藤奈香(PHP新書/税抜880円)


「ミスター・トイレ」と呼ばれる社会活動家、ジャック・シムが、ユーモアの力によって国連で「世界トイレの日」を制定させるまでをユニークに綴った一冊。「トイレ文化」の普及という社会活動を入り口に、「フェミニンな社会」への変換を訴える後半は鳥肌モノです!


構成/小泉なつみ
この記事は2020年1月29日に配信した記事の再掲載です。