Facebookの最高執行責任者のひとりである、シェリル・サンドバーグをご存知でしょうか。彼女は女性のキャリアやリーダーシップを説いて世界中でベストセラーとなった自己啓発本『リーン イン』の著者としても知られています。

写真:ZUMA Press/アフロ

私が彼女に興味を持ったのは、2013年に出版された『リーン イン』ではなく、2017年に出版された『オプションB』という書籍の記事を読んだときのこと。

バツイチだった彼女は、34歳のときにオンライン調査会社「サーベイ・モンキー」のCEO、デイブ・ゴールドバーグと再婚。業界でも仲睦まじい夫婦として知られていましたが、2015年のバカンス中に夫が急死してしまいます。

アメリカで最も成功している女性のひとりであり、愛する夫と子供にも恵まれた、人も羨むスーパーキャリアウーマンを突然襲った人生最大の喪失。そんなシェリルに、友人である心理学者アダム・グラントは「最高の選択肢であるオプションAは失くなった。これからは、オプションBで生きるしかない」と伝え、人生の喪失から立ち直るための回復力=レジリエンスを鍛えるための方法を教えたのだそうです。

前置きが長くなりましたが、母の死や離婚を経験したあとにこの本を読んだ私はいたく感銘を受け、「そうか。人生とは、喪失と再生の繰り返しなんだな」と思った次第。ちなみに、そこからインスパイアされて始めたのが、Web Domaniで連載している「バツイチわらしべ長者」という、離婚経験者たちへのインタビュー読み物です。離婚という喪失体験を経ても尚、力強く生きる方達の経験談は、他の方達にとっても希望になるのではないかと思ったから。

この本の中でシェリルは、妻と子供を事故でいっぺんに亡くした男性など、彼女と同じように人生で大きな喪失を経験した人たちの話をいくつも紹介しているのですが、それぞれが人生を絶望したくなるような壮絶な逆境を味わっていながらも、少しずつ時間をかけて必ずそこから回復していく「レジリエンス」を持っている。どんな悲しみの淵にあろうと、生きている限り人は喜びや希望を、再び見出すことができるのです。

人生では上手くいくことばかりじゃなくて、失恋や夫の浮気やら両親の病気や会社の倒産などなど、さまざまな喪失体験が起こりうる。だけど、そんなときにも「レジリエンス」を鍛えておけば、その悲しみや痛手から、早く立ち直れるようになる。「レジリエンス」は、誰でも筋トレのように鍛えられるもの。そう知っておくと、これから待ち受けているかもしれない試練にもがんばって立ち向かえるようになるので、まだそんな経験はないというラッキーな方にもおすすめしたい一冊です。

残念ながら肝心のこの本を私は誰かに貸してしまったようで、その後また別の喪失体験で苦しんでいるときに読み返して実践するのを、すっかり忘れていたのですが……(涙)。「そうか、あのとき、この本を読めばよかったのか!」と思い出したのは、今回、シェリルが、夫の死から5年たった今、婚約したというニュースを見たから。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Sheryl Sandberg(@sherylsandberg)がシェアした投稿 -


インスタにシェリルが「婚約したわ!」と投稿。この幸せそうな笑顔を見ているだけで嬉しくなってしまいます。

お相手は、コンサルティング会社の創立者、トム・バーンサルで、シェリルより4歳年下の46歳、しかもハンサム♡ ちなみにトムは俳優、ジョン・バーンサルの兄でもあります。

ふたりの縁を取り持ったのは、亡き夫デイブの弟だそうで、家族や社会奉仕に対する価値観もぴったり、出会ったときから意気投合して婚約に至ったとか。バツイチのトムには子供が3人、シェリルにはふたりいるのですが、「子供が人生の最優先事項」という考えも一緒。

「世界で最も影響力を持つ女性」リストにランクインするようなセレブであり、資産10億円以上であるシェリルは、もちろん私たち一般人とは違うけれど。それでも、愛する夫の死を乗り越えて、再び愛しあえるパートナーをこの歳になってみつけたというのは、とっても希望が湧くニュースではありませんか。

だって夫を亡くしてからの恋愛事情について、2017年にはシェリルはこんな風に語っていたのですから。

「男性はもっと早く恋愛市場に戻るし、もっとたくさんデートするわ。だけど女性は男性よりもそれに対して批判される。それって本当にフェアじゃないわよね。私は人々に思い出して欲しいの。デートすることも、前に進むための一歩なのよ。それもオプションBなの。もし私がデイブとだけデートできるなら……。そして、私はその選択をした。その選択をしたのよ。だけどその選択肢は今や、失われてしまったの」

人生で望んでいたオプションAが消えてしまったとき。新たなオプションBにどう向き合うか。それこそが、人生を生きることの醍醐味のようなものなのかもしれません。
 

前回記事「今年のアカデミー賞からわかる、「オーバー40女優がますます台頭するハリウッド」」はこちら>>