現在放送中のドラマ『日曜劇場 テセウスの船』。ある雪深い村で起きた、無差別毒殺事件。その犯人として逮捕されたのは、村の駐在警察官・佐野文吾(鈴木亮平)でした。その日から佐野一家の人生は暗転。殺人犯の息子として世間から迫害され、暗い人生を送ってきた主人公・田村心(竹内涼真)は、唯一の味方である妻・由紀(上野樹里)の強い訴えで、父親の事件と向き合うことを決意。タイムスリップによって31年の時を遡り、事件の謎を追いかけます。
そんなヒューマンミステリーで主人公・心役を熱演する竹内涼真さん。過酷な運命を背負った難役に「自分でもびっくりするぐらい感情が出てしまうときがある」と話します。
『テセウスの船』この後の展開は? 原作で追っかけ&先取り!>>
1993年、東京都出身。2013年デビュー。2014年にドラマ『仮面ライダードライブ』の主演を務め、一躍脚光を浴びる。その後もドラマ『下町ロケット』、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』など、話題作に多数出演。2018年に第42回エランドール新人賞を受賞。また映画『帝一の國』大鷹弾役で、第30回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞、第41回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞。2020年はTBS日曜劇場『テセウスの船』他、吉田修一による同名小説の映画化『太陽は動かない』が5月15日公開、同作品のドラマ版がWOWOWにて5月24日から放送。
100%の気持ちでぶつかった告白シーン
たとえば現代に戻ってきた第4話で、獄中の父と面会を果たすシーン。そこで湧き上がってきた感情は、想像を超えたものでした。
「年老いた文吾さんの顔を見た瞬間、31年前の過去で楽しく話していたときの顔とか、手錠をかけられて連行されたときの睨むような顔とか、いろんな文吾さんの顔がフラッシュバックして。撮影に入る前に『こんなふうにやりたいな』と考えていた自分の演技プランが一気に吹き飛びました」
真っ白な髪に、シワとシミだらけの肌。31年前の見る影もない姿になった父・文吾は、それでも心を見て「心さん」と呼びかけ、いとおしげに微笑みます。その瞬間、潤んだ心の右目から一筋の涙がこぼれました。
「心は、現代では一度も父に会ったことがないんですよね。ずっと逃げて向き合わないようにしてきた。そんな父が目の前にいて、『心さん』と呼んでくれて。あそこは、初めて自分がタイムスリップして時代を動かしていることを認識してくれる味方ができた安心感もあったし、父親と面と向かって話ができた喜びもあったと思う。すごく難しいですよね、正解がないから。どうしても気持ちが溢れてしまうので、どう感情の整理をすればいいのか、監督とすごく相談しました」
何度も何度も台本を読み込み、頭の中でイメージを広げる。毎日、そんな入念な準備を経て撮影に臨んでいる竹内さん。けれど、胸揺さぶる演技は、そんな事前準備を超越したところにあるようです。
「3話で父親に自分が息子だと告白するシーンもそうでした。何度かテストをしたんですけど、なかなかしっくり来なくて。自分しか知らない真実を人に話すとき、どうするんだろうっていろいろ考えながら撮影に入っても、現場に立つと考えていたことが全部崩れるんです。机を挟んで向かい合って話してみようとか、立って話をしてみようとか、監督や亮平さんといろいろアイデアを出し合ったんですけど、なかなかこれだっていうものにたどりつかなくて」
出口のない試行錯誤。その末に、竹内さんが選んだ答えは、とてもシンプルなものでした。
「1回100%の気持ちでやってみようって。そうやってできたのが、実際にオンエアされたあのお芝居でした。自分でもあんなふうになるなんて思っていなかったし、実際テストで一度も味わえなかった感覚で。でもやってみたら、あれがいちばん僕の中で自然な形でした。自分の想像を超えた感情に出会えることってあるんだなって。そういうお芝居の醍醐味をこの作品では何度も体験させてもらっています」
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