1989年に創刊、休刊となる2007年までの間に圧倒的なファッション哲学で多くのファンに愛された女性誌「ヴァンテーヌ」。今もなお新鮮に響くヴァンテーヌのおしゃれ哲学が、もし2020年に甦ったとしたら‥? 今回は、自由におしゃれを楽しむミラノマダムを代表に、憧れの女性像とともに取り上げられてきた「迫力のあるおしゃれ」について。大草ディレクター流「迫力のあるおしゃれ」をご紹介します。

 


年齢を重ねた“存在感”が
着こなしをもっと豊かにする


20代の女性を対象としていた「ヴァンテーヌ」が40代、50代のミラノのマダムの格好良さを”迫力のあるおしゃれ”として度々取り上げていたのは、おしゃれを年齢ではなく、その姿勢で捉えていたから。あれから数十年、年齢と経験を重ねたいまの私たちにとっての”迫力のあるおしゃれ”とはなんでしょう?ーー大草ディレクターにお話を伺いました。

「年齢を重ねるなかで”いつもの服”や”無難な服”、”ベーシックという名の退屈”…そういったものの後ろに隠れがちな時期は、誰にでも訪れると思います。けれどそれでは、おしゃれのときめきや、前に進む原動力は得られません。

“迫力のあるおしゃれ”の”迫力”とは、年齢を重ねて身についた存在感や自信、とも言い換えられます。それは、歳を重ねたからこそにじみ出るチャームポイント。その人自身の意志や前向きな気持ちが強い美しさとなって、コーディネートを支える“迫力”になるんです。

”迫力のあるおしゃれ”は、その人の内面の豊かさを表します。いつまでも可愛く、いつまでも守られていたいーー若い時の未成熟で控えめな可愛らしさももちろん素晴らしいものですが、そこから一歩進み、今の等身大の自分自身をファッションに反映させていく作業です。

20代の若い女性向けだった『ヴァンテーヌ』が、ミラノのマダムを代表とする”迫力のあるおしゃれ”のエッセンスを取り入れていたのは、20代には20代の、そして40代には40代の格好よさと存在感がある、と考えていたからでした。それを生かすかどうかは、年齢の問題ではなく、その人自身のおしゃれに対する姿勢だということ。歳を取ることを後ろ向きにとらえず、ある種の“強さ”をファッションに取り入れてみませんか。それは、これから先のおしゃれをもっと豊かに、自由にしてくれると思うのです。それに足る内面は、すでにあなたに備わっているのですから」(大草さん)

ミラノのマダムたちのおしゃれをたびたび取り上げてきた「ヴァンテーヌ」。コーディネートだけでなく、そこに着る人の存在感を加える、という考え方を提唱し続けました。「ヴァンテーヌ」(左)1994年8月号、(右)1994年9月号©ハースト婦人画報社

 

2020年版“迫力のあるおしゃれ”①

シンプルだけれど目を引く
レザーパンツの吸引力

 
 
 

コート¥265000、レザーパンツ¥165000/マディソンブルー カットソー¥8900/エイトン(デミルクス ビームス 新宿) バッグ¥62000※銀座店限定/フルラ(フルラ ジャパン)  フラットシューズ¥22000/ファビオ ルスコーニ(ファビオ ルスコーニ ジェイアール名古屋タカシマヤ店) サングラス¥34000/モスコット(モスコット トウキョウ) ピアス¥49000/ソフィー ブハイ(マルティニーク ルコントルミネ有楽町店) ネックレス〈短〉¥71000/ハルポ(エスケーパーズオンライン) ネックレス〈長〉¥27000/アダワットトゥアレグ

 


年齢を経たからこそ叶う、おしゃれの愉しみ


「”迫力”という言葉には人それぞれイメージがあると思いますが、レザー=強い、というイメージを抱いて気後れされる方も多いと思います。でも逆に、その普遍的な強さをもっともっと楽しんでもいいのではないか、と思います。

クロップド丈のレザーパンツは、フルレングスよりも全身のバランスが軽やか。良い意味でのファニーさが加わり、デイリーに着こなせます。合わせたトレンチコートのように、柔らかく風をはらむシルエットや素材のアイテムとも、バランスを取りやすいんです。トップスはシャツではなくTシャツにして、さらにアクセサリーで抜け感を出して。レザーを着ていても硬すぎず、肩ひじ張らないこなれ感が、今っぽい印象を引き出してくれます」

 
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