「多様性」もこれからの流行を知るうえで押さえておきたいキーワード。すでに少なくないブランドで「多様性」を意識した展開を始めています。

たとえば、ミモレ読者にもおなじみの「エイトン」はウィメンズ、メンズを分けずにユニセックスなサイジングで展開していますよね。「コスチューム ナショナル」も2019年春夏からユニセックスラインを始めています。自分にフィットするサイジングを探してメンズラインを着るなんていうのも、当たり前になってきました。ビューティフルピープルは、ノージェンダーラインや「母親と子どもが共有できる服」をコンセプトにしたキッズシリーズを展開していたり。いろんな意味でボーダーレスになってきています。

チームmi-molletにも愛用者が多いATON(エイトン)。


所有はもう古い!? 服もシェアが当たり前の時代になる


「多様性」はメンズ、ウィメンズなどの垣根がなくなってきているということはもちろんですが、若い世代では服の”所有”に関しても多様になってきているようです。

大学生の長女と友達の間では、服のシェアも当たり前。先日も私のアニエスベーのカーディガンを娘の友達が着ていたみたいで(笑)。「ありがとう。また貸してね」という娘宛の手紙と一緒に置いてありました。娘も見たことのないワンピースを着ているなと思ったら「〇〇ちゃんのワンピース借りてるんだよね」と本当に気軽に服の貸し借りをしていて驚きます。

お洋服のレンタルサービスも増えていますよね。全身コーディネートが送られてきて、返却してもいいし、買い取りもできる。まだ、私たちの世代ではシェア文化に馴染みがない人も多いですが、若い世代ではクローゼットも共有する時代になってきているようです。所有することにもうあまり意味はないみたい。Z世代と呼ばれる20歳前後の若い子たちは、ファッションに限らず、新しい価値観で生きていて本当に面白いなと思っています。

 


40代、50代向けのブランドが確実に増えている!


私たち世代に話を戻すと、これまでは20代や30代に向けたブランドが圧倒的でしたが、最近は40代や50代のためのファッションブランドが増えてきていますよね。昔ながらの「ミセス向け」とは全然違う。これも多様性のひとつなのかなと思います。

たとえばアダストリアがスタートさせた「Elura(エルーラ)」

「今まではいていたパンツがにあわなくなった」「カジュアルすぎる洋服だと、顔うつりが気になる」といった大人の女性の悩みにしっかり応えつつ、リーズナブルな価格帯で展開している。


またレナウンもEC限定で「ENSUITE LUMIERE(エンスウィート ルミエール)」というブランドを昨年秋からスタートさせました。

他にもターゲット年齢を上げているブランドは増えています。これまではファッションというと20代30代が中心で、年齢を重ねると自分に合ったブランドが見つけにくい、ということがありましたが、これからは細かく年代や嗜好に合わせたブランドが増えてくるんじゃないかなと思います。

「多様性」はひとつのアイテムの中にもあって。たとえば、私がいまあるブランドとコラボレーションで作っている服は“相反する”がテーマ。サファリジャケットなんですが、袖がコンシャスでクチュール感があるものなど、マスキュリンとフェミニン、ふたつの要素がひとつのアイテムに集約している。着こなしでテイストをMIXすることはよくありますが、ひとつのアイテムの中でMIXしたアイテムです。意識したのは、一着の服の中にいくつもの女性像がある服。私たちってひとつの顔だけじゃなく、さまざまな面を持ち合わせていますよね。すごい凜とした人なのに、どこか可愛らしかったり。そんな多面性を服でも表現してみたかったんです。ふたつの要素を持っているので、フェミニンなアイテムとコーディネートすれば、フェミニンが加速しますし、その反対も然り。実際にコーディネートするときも幅が広くて着回しやすく実用的なんです。

あらゆる方向でファッションの多様性が広がれば、年齢や性別などに囚われることもなくなり、おしゃれがラクになる。それは歓迎すべきこと。ぜひこのままこの流れが進んでいってほしいですね。


取材・文/幸山梨奈
構成/川端里恵(編集部)

 

 

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