ミモレコンセプトディレクター大草直子と美容ジャーナリスト安倍佐和子が、2020年の注目キーワードを紹介する連載、第2回はビューティ編です。美容業界でも重要度が高まっている「サステナブル」な視点。国内外の化粧品ブランドの取り組みや注目アイテムをご紹介します。

写真:Shutterstock

大草さんの言うように、ファッションに限らず、私たちのライフスタイルに欠かせない大きなテーマが「サステナブル」、そう感じています。持続可能なという意味ですが、気候変動の危機に直面する私たち世代が、次の世代のために担うべきミッションでもあります。

 

ここ数年で、ビューティにおける「サステナブル」も広く浸透しつつあります。オーガニックやナチュラルブランドだけでなく、いまでは世界トップクラスの化粧品ブランドやラグジュアリーブランドでさえ「サステナブル」を基本理念に掲げているほど、それだけ急務であることが伺い知れますね。

ビューティを俯瞰でみると、毎日の生活の中で消費や汚染の大きな割合を占めていることがわかります。朝、顔を洗う、歯を磨く、メイクをする、髪や身体を洗う、スキンケアやボディケアなど。

その際、私たちは多くの自然資源の恩恵を受けているにも関わらず、ゴミを出し、水を汚すばかりで、自然に還元することがなかなかできていないのが現状。マイクロプラスチックの問題も、まさか自分たちの歯磨き粉やメイクアップ製品が原因のひとつだったなんて、知らなかった人も多いのでは?


化粧品ブランド各社が積極的に対応し始めた「サスティナブル視点の製品づくり


ある雑誌の企画で、化粧品ブランド100社近くにアンケートを実施したところ、じつに8割近くがSDGs(持続可能な開発目標)に基づき、「サステナブル」な取り組みを行っていたことがわかりました。温度差はあるものの、脱マイクロプラスチック、自然原料への配慮や再生可能なパッケージ、輸送の簡略化やエコバッグの導入など、見えにくいけれど着実に進化していたのです。

外資ブランドで言えば、ラグジュアリーブランドの代表格「ゲラン」は、オーキッドを自社農園で栽培、蜂由来成分を保護するための取り組みなどをかなり前から実践してるし、「ランコム」も自然由来成分を制限しながら採取、再生ガラスを使用するなど「サステナブル」に貢献。オーガニック先進国オーストラリアからは、洗顔料やクレンジングを使わずともメイク落としできる洗顔パフ「フェイスハロー」が上陸。なんと、水で落とせて、しかも洗えば何度でも使えるというスーパーエコなものまで! じつは「エルメス」から3月にデビューするルージュ・エルメスも、リフィル対応の「サステナブル」処方なんですよ。

天然由来成分97%配合、ノンオイル、ノンシリコン、ノンアルコール処方のエシカルな発想のリキッドファンデーション。多様化する時代を考慮したカラーレンジは30色(日本では10色展開)。ゲラン レソンシエル SPF20/PA+++ 30ml 全10色 ¥7000

 

酵素の働きをサポート、ローションの97%がフランス産のブナの芽エキスで、一年でたった2~3週間、限られた量だけを手摘みし、バイオテクノロジーで応用。同じ樹から採取するのは4年に1度に配慮。パッケージも再生ガラスを採用している。ランコム クラリフィック デュアル エッセンスローション 150ml ¥11000

 

自然繊維にこだわり、200回は使用可能というエコなクレンジングパッドは西オーストラリア発。水に濡らして使用、洗えば何度でも使える究極のサステナブルなメイクアップリム-バー。フェイスハロー クレンジングパッド(オリジナル/ホワイト)一枚入り ¥1300/アリエルトレーディング


コスメを使い切ることもビューティフルエイジングへの道


ファッションと比較すると、化粧品ブランドが取り組む「サステナブル」って、一見わかりにくいけれど、私たちが注意を払い、ブランドを選ぶことそのものが「サステナブル」なんだという意識は忘れずにいたいもの。そして、大草さんが言っていたように、“いまある物を大切に長く使う”という意識はビューティでも同じ。手にしたものを使い切ることは、私たちひとりひとりができる「サステナブル」なアクションです。継続使用することで、きれいが加算されるというおまけも期待できるので、サステナブル・ビューティは結果、ビューティフルエイジングと言えるほど。そんな嬉しい恩恵さえ与えてくれるのですから、最後まで使い切った後の容器はリサイクル、あるいは分別廃棄を徹底して、ぜひとも次の時代へと“循環”させていきたいですね。


撮影/戸松沙紀(編集部)
構成/川端里恵(編集部)

 

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