実験内容を簡単に説明すると、このようなものです。

10歳から12歳までの子どもたち約400人に知能テストを受けてもらい、実際の点数は伏せた上で、「あなたの成績は100点満点中80点だ」と全員に伝えます。
そして子どもたちを3つのグループに分け、成績以外に子どもたちに伝えるコメントを次のように変えます。

◎グループ1 「本当に頭がいいんだね」と褒める。

◎グループ2 「努力のかいがあったね」と褒める。

◎グループ3 何のコメントもしない。

さらにその後、子どもたちに誰でも解けるようなやさしい問題と、難しい問題のどちらかを選んでもらい、チャレンジしてもらうのです。

「褒める=能力を伸ばす」と考えると、「本当に頭がいいんだね」と褒められたグループ1の子どもたちが自分の能力に自信を深め、難しい問題にチャレンジしそう……ですが、結果は真逆だったのです……!
 

難しい課題を避ける褒められた子


難しい課題を選ばなかった子どもたちの割合を表にしたものが、下図です。この結果に対して中野先生はこう分析します。

 

「『本当に頭がいいんだね』と褒められたグループ1の子どもたちは、何も言われなかったグループ3の子どもたちよりも、難しい課題を回避した子どもの割合が高くなりました。褒めることが自尊心を高めると信じてきた人々にとっては、衝撃的な結果であると思います。
『頭がいいね』と褒めたことによって過半数の65%がやさしいほうの課題を選び、難しい課題を避けたのです。『頭がいいね』と褒めることが、子どもたちから難しい課題をやろうとする気力を奪い、より良い成績を大人たちに確実に見せられる、やさしい課題を選択させるという圧力として働いていたと考えることができます」