3月26日に最終回を迎えるアニメ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』。推しのためにすべてを捧げるアイドルオタクの姿を描いた本作は、すべての推しを持つ人から圧倒的な共感を集めました。
本作に限らず、昨年高い評価を受けたドラマ『だから私は推しました』など、今や世の中は空前の「推し」ブーム。長らくに渡ってネガティブな扱いを受けてきた「オタク」なる生態もすっかり市民権を獲得。閉塞感漂う世の中でハッピーな生き方として認知され、多くの人が自ら「オタク」と名乗り、「推し事(=推しを応援すること)」にいそしんでいます。
今日も僕は推しを想いながら奥村チヨを歌う
かく言う僕も、オタクのひとり。僕のジャンルは、若手俳優沼です。群雄割拠のこの若手俳優沼、まず何がおそろしいって、みんな震え上がるほどに顔がいい。使っているパーツは目鼻口とどれも僕と同じなのに、出来上がりがダビデ像とせんとくんぐらい差がある。神様ちょっと力入れすぎ。
でも、そんな神様のえこひいきのおかげで生まれた羞花閉月の俳優たちが、お芝居という正解/不正解のない世界で、自分と向き合い、時に劣等感に苛まされながら、それでも人の心を動かす表現を求めて懸命に戦う姿は、まさに少年漫画のそれ。「俺より強い奴に会いに行く…!」とばかりに、無限ストリートファイトに挑む背中を応援することが、僕の喜びとなりました。
きっかけは、ある1本の舞台。そこで、僕は推しに出逢ったのです。いや、正確に言うともっと前から知っていましたし、何なら仕事柄、取材で直接話したこともありました。そのときから顔の綺麗な男の子だな〜とは思っていましたが、逆に言うと感想はそれだけ。その日、客席に座るまで、僕にとって彼は世の中にたくさんいる「顔の綺麗な男の子」のひとりでしかなかったのです。
ところが、舞台が進めば進むほど、もう彼しか目に入らない。身長は、169cm。決して舞台映えするような長身ではありません。むしろ遠目で見るほど小柄。なのに、その小さくて細い体が全身磁石になったみたいに、ぐいぐいと僕を引き寄せる。このまま板の上で力尽きてしまうのではないかと本気で心配になってしまうほど全身全霊で役に命を注ぎ込み、毛穴という毛穴から汗と熱と光を放つ推しの姿に、淀んだ僕の心はすっかり浄化され、客電がつく頃には、その「顔の綺麗な男の子」は僕にとって初めての推しとなっていました。まあ、松田凌って言うんですけど!!(大声)
以来、口ずさむ歌はこの曲ばかり。
あなたと逢ったその日から 恋の奴隷になりました。
まさか平成も終わろうとしている頃に、奥村チヨを人生のテーマソングにする日が来るなんて思ってもいませんでした。
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