近年、舞台観劇が女性たちの間でブームになっています。トレンドを牽引するのは、「2.5次元舞台」と呼ばれる漫画やアニメ、ゲームを原作とした舞台作品。中でも来年1月に上演される注目のタイトルが、連載開始30周年を迎えた大人気漫画「はじめの一歩」を舞台化する、リアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!!です。
主人公・幕之内一歩を演じるのは、今作で初めてメインキャストとして舞台に出演する後藤恭路さん。
そして、一歩のライバルとなる“浪速のロッキー” “浪速の虎”・千堂武士を、これまで数々の2.5次元舞台に出演してきた松田凌さんが演じます。
興味はあるけど、何から観ればいいのかわからない。そんな人のために、2.5次元舞台の世界を、おふたりがナビゲート。これほど多くの人々の心を掴む2.5次元舞台の面白さの秘密とは…?
左)松田凌(まつだ・りょう) 1991年9月13日生まれ、兵庫県出身。2011年デビュー、2012年にミュージカル『薄桜鬼』斎藤一篇で、初舞台にして初主演を務める。以来、『メサイア』シリーズ、舞台『K』シリーズ、『曇天に笑う』シリーズなど、数々の人気2.5次元作品に出演。また『仮面ライダー鎧武/ガイム』(城乃内秀保役)、映画『HiGH & LOW THE MOVIE』シリーズ(White Rascals/COSETTE役)など、実写作品にも活躍の場を広げている。12月8日まで舞台『里見八犬伝』(犬川荘助役)に出演中。
右)後藤恭路(ごとう・きょうじ) 1998年2月19日生まれ、愛知県出身。これまで、ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』、映画『honey』『風に立つライオン』などに出演。今回のリアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!!(幕之内一歩役)が初主演となる。
役になりきるために役者が本気で汗を流すのが、2.5次元舞台の魅力
城田優、斎藤工、瀬戸康史、志尊淳ら数々の人気俳優を輩出したミュージカル『テニスの王子様』や、「第69回NHK紅白歌合戦」に出場し話題となったミュージカル『刀剣乱舞』など、今や2.5次元舞台には多くのヒット作がひしめき合っています。では、2.5次元舞台とは、そもそもどんな舞台のことをさすのでしょうか。
松田 簡単に言うと、漫画やアニメ、ゲームといった2次元の世界を、僕たち3次元の人間が演じることから、間をとって「2.5次元」と呼ばれるようになったようです。映画やドラマでも原作ものの作品はありますが、それらと違うのは、舞台上で生身の人間が演じること。オールメール(男性のみで演じること)であったり、10代後半〜20代の若い俳優がメインで出演するものも多い印象です。
後藤 僕が最初に2.5次元舞台にふれたのは、高1のときに観たミュージカル『テニスの王子様』でした。客席のほとんどが女性の方ばかりで、ちょっと恥ずかしかった記憶があります(照)。驚いたのが、試合シーン。実際のテニスボールは使わず、ピンスポットでラリーを表現しているんです。本物のボールは使っていないのに、ちゃんと試合の行方がわかるし、すごく見やすくて面白いなという印象でした。
今回舞台化が決まった「はじめの一歩」はボクシング漫画の金字塔。編集もスタントマンもない舞台の世界では、俳優自らが本気で体を鍛え上げ、ボクシング技術も身につけなければいけません。そこで待っているのが、厳しいトレーニングの日々です。
後藤 今、一歩の必殺技のデンプシー・ロール(上半身を∞の軌道で振り続け、身体が戻ってくる反動を利用してパンチを打つ技)を練習しているところです。上半身を振る分、体幹が弱いと体が横に揺られてしまうので、踏ん張りが大事だなと感じました。なので、今は階段を登ったり坂道を走ったり、とにかく足腰を鍛えるようにしています!
松田 いきなりデンプシー・ロールをリアルにやってくれって言われることなんて、なかなかないよね(笑)。自分だったら相当なプレッシャーだと思う。
後藤 僕はアマチュアでシュートボクシングをやっているのですが、やっぱり使う筋肉がまったく違うなと思いました。トレーニングでダッキング(上体を前に屈めるようにして相手のパンチをかわす、ボクシングにおける基本的な防御技術)を1ラウンドやったら、もうそれだけで腰が痛くて動けなくなる。まだまだ練習が足りないなって感じているところです。
松田 あと大変なのは体力。あの試合の迫力を出そうとしたら、相当体力を削られると思うんですよ。最後まで無事に走りきるためにも、今からしっかり体力をつけておかないと。そういう意味では、もしかしたら僕たち役者もアスリートのようなもの。スポーツに近いものを要求されているんだと思うし、それにちゃんと応えられて初めて本物の試合に負けない熱を見せられるんだと思います。
コマの中で描かれた白熱の試合を嘘なく舞台上で再現するために、役者自らが汗を流し、魂を削る。道のりは過酷ですが、その気迫と熱量を肌で感じられるのが2.5次元舞台の醍醐味です。
並々ならぬ原作愛が「大好きなキャラが目の前にいる」感動を生む
また、2.5次元舞台の特徴のひとつが、原作愛。キャストもスタッフも原作に最大限の敬意を払い、原作ファンの期待に応える作品をつくることに全力を尽くします。
後藤 「はじめの一歩」は小さい頃からアニメを観ていて。今までふれてきた漫画やアニメの中でいちばん大好きと言ってもいいぐらい思い入れのある作品です。
松田 「はじめの一歩」を読むと、忘れていた気持ちを思い出させてくれるんですよね。僕はこの世界に入って8年になりますが、最初の頃はそれこそ一歩のように愚直にやっていたけれど、経験を重ねて、いろんなものを知っていくうちに、あれこれ頭で考えるようになって。「はじめの一歩」はそんな自分をまた真っ白に戻してくれるんです。
後藤 中でも一歩が大好きで、鴨川会長を信じて、どんなに厳しいトレーニングにも頑張ってついていくところとかすごいなって思います。僕は一歩みたいにまっすぐでも強くもなくて。めちゃくちゃ臆病だし、こうやって取材を受けているだけでもビクビクします。でもだからこそ、弱虫だった一歩が強くなっていく姿に惹かれるし、僕も一歩みたいになりたいって憧れるんです。
松田 僕は千堂の強さにこだわるところとか、甘ったるくない性格が好きですね。千堂しかやるつもりはないぞっていう気持ちでオーディションに臨んだので、こうして選んでいただけて本当にうれしいです。
演じるキャラクターを心の底から愛すること。魅力を最大限に引き出すために、できることはすべてやること。役者たちが役に本気で命を吹き込むから、2.5次元舞台は「大好きなキャラがコマから飛び出して目の前にいる」感動を味わえるのです。
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