曖昧さに耐える能力を身につけさせよう 


英語をはじめとする言語の習得で重要なのは、曖昧さに耐える能力だと言われています。これを英語で「Ambiguity Tolerance」と呼びます。曖昧さに耐える能力は、子どもの頃にとくに高まります。 

 

曖昧さに耐える能力があると、文章を聞いたり読んだりしたときに、少しくらいわからない単語があっても前に進み、要点となる単語をつなぐだけでだいたい意味がわかるようになります。 

曖昧さに耐える能力がないと、1つ聞き取れない単語があるだけで、後の英文が耳に入らなくなり、絵本もテキストもそれ以上読み進められなくなります。これでは単語を全部覚えるまでリスニングもリーディングも満足に進まず、英語力が一向に高まらないという不本意な結果を招きます。 

僕が絵本を選ぶときに3ワードルールを定めたのは、知らない単語が2つくらいまでなら曖昧さに耐えて読んでもらいたいから。保護者に「cloudってどういう意味?」と口を出してもらいたくないのも、そうしているうちは曖昧さに耐える能力が育たないからです。 

逆に言うと、すべての単語を理解できなくてもリーディングを楽しめるのは、子どもならではの特権といってもいいかもしれません。絵本であれば、絵が意味を補完してくれます。「うちの子には難しすぎるかしら」と保護者が勝手に判断せずに、お子さんの好奇心に任せてみるとよいと思います。 
 

 

辞書は紙がよいか? 電子でもよいか? 


僕は授業のなかで英和辞書を使わせていません。わからない単語に出くわすたびに辞書を引くのではなく、曖昧さに耐えてリスニングとリーディングを続けて、前後の単語のつながりから意味を推測するようになってほしいからです。ただし、和英辞書は教室に置いています。授業で日本語を英語にして答える場面が多いためです。 

といっても、これは小学生の英語初心者レベルの話で、中学生になると辞書は必要になります。保護者からもよく「辞書を与えるなら、やはり電子よりも紙がよいのでしょうか?」という質問を受けます。これだけICTを活用している僕でも、答えは実は 「紙の辞書」です。 

なぜかというと、子どもにはいっぱい「寄り道」をしてほしいから。電子辞書あるいはネット検索だと、わからない単語の意味を調べて、そこで終わりです。一方、紙の辞書だと、調べた単語の前後の単語にも目が移ります。その寄り道で、また新しい単語との出会いがあるのです。

Amazonなどのネット書店で買い物をすると、ほしい本を買って終わりですが、 リアル書店だと、棚から棚へつい目が移ってしまいますよね。それと同じです。外出先でも手軽に調べられるなど電子辞書の良さももちろんある(紙の辞書と違い、音声と一緒に勉強できることは、電子辞書の最大のメリットです)のですが、寄り道によって得られる世界の豊かさを子どもたちに手放してほしくはないと思います。 

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構成/小泉なつみ

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