少しだけ早起きの土曜日の朝、近所のマルシェに買い出しは、お気に入りの自転車で。楽しい週末は幸せなルーチンから始まる。
雲一つない晴天で、春の到来がより一層身近に感じられたこの日。奇しくも、フランスで外出制限が出る事になる前日の朝。そんな事態を夢にも思わず、呑気に、何時もの休日の風景に、ワクワクしていたのです。
天気も良いし、ついでに外でお昼でも食べて帰ろうか、なんて、彼からの嬉しい提案が。わ~い!じゃあちょっとだけお洒落しちゃおうかなっ。五分だけ待っててね。
ちょっとそこまでのお出かけだからコートは無しね。ざっくり編みの暖かい冬物のセーターに、春物の軽やかなティアードスカートを合わせ、スウェードのショートブーツで足元にボリュームをプラス、と。ほら!今だからできる、季節のいいとこどりコーデの出来上がり!
こんな端境期特有の、二つの季節感をミックスしたアンビバレントな装いが好きだ。晩夏の、少し秋の気配が感じられる頃のまだ夏の装いに、スウェードやファーの小物を使うのも好き。真冬に籠を持ったりなんかは、今や皆の定番でもありますよね。
あれれ?冒頭の写真のHirokoさん、カメラマンに向かって何か一生懸命に言っていますね。
――え?ネコ?
「自転車の荷台にね、黒ネコが居たの!まだ小さな赤ちゃんネコだったんだけれど逃げちゃった!絶対に野良じゃない感じ。大通りに出たら危ないよねえ。大丈夫かなぁ。」
ふと目を上げると電柱に、迷いネコの張り紙が見えた。
『うちのアキラ君知りませんか?四か月の白黒の赤ちゃんネコで、アキラ君と呼ぶとニャァと答える良い子です。云々。』
ね、さっきの逃げた子、アキラ君だったよね、絶対!と、興奮気味に捲し立てる私に、彼は半ば呆れ顔。何を隠そう、私、ネコには目がないもので。
――え?ネコなんか居た?ほら、写真撮るなら撮って、早くメシ行こうよ、メシ!Je meurs de faim !
日本で二番目に多いと言われる、ハチ割れの白足袋ネコ、その名もアキラ君。他人事とは思えず、迷子かな、脱走かな?と、気はそぞろに、半ばランチなんかどうでも良くなってきた。ちなみにね、日本で一番多いネコ柄はキジトラなんだよ、知ってる?
――って、Hiroko! Mon bébé chat!僕の子ネコさん!ほら行くよっ!
イザベル・マランのショートブーツ。ポインテッドトウとは対照的な、足首からヒールにかけて、丸みのあるラインが印象的な作品は、毎年マチエールを変えて登場するイザベルの定番商品。私のは何年か前のスウェードと表革のコンビ。
外出制限が始まり、ネコババァが激減したであろうパリの街。アキラ君、いや、他の野良ネコさん達も、ひもじい思いをしていないと良いけれどなぁ。
――うちのアキラ君、知りませんかぁ~?
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