夫婦の視点の違い。「子育てのことは全部旦那さんに聞いてます」
今回の本でもうひとつ印象的なのは、旦那さんである井上康生さんのオフショット。東原さんと肩を並べて歩く姿や、子ども達に囲まれて父の日のお祝いをしてもらって見せる笑顔など、柔道家の顔とは違う一面が見られます。
「夫はまわりから、冗談ひとつ言わなそうって思われているようですけど、全然そんなことなくて。家では私より冗談を言ったりしてるんですよ」
柔道日本代表の監督を務める井上康生さん。日本と海外を飛びまわる日々で、家庭のことに関しては東原さんにお任せなのかと思いきや、子育ての方針を決めるのは井上さんであり、東原さんも子どものことは全て井上さんに聞くようにしているのだとか。
「夫は大学で教員もしているし、全日本の選手も見ているので、教育の現場にいる人間です。だから、子どもの悩みを俯瞰して見られるんでしょうね。私とか母親って、できないものを見つけてはできるようにさせなきゃって思っちゃう。『まわりの子はできるのに、うちはできない。どうしよう……!』って、小さな世界で見てしまうんですけど、主人はひとつ引いて見てくれるので、私も冷静になれます。夫からは『焦らないで』ってよく言われてます(笑)」
子どものことをきめ細かく心配するお母さんと、一歩後ろからどっしりと見守るお父さん。そして旦那さんのアドバイスをきちんと受け止める東原さんからは井上さんへの心からの信頼と尊敬が感じられました。
子どもは勝ち負けのある世界で育てたい
子どもたちはお父さんの影響で柔道を習っていて、本の中には柔道場での1コマも。しかし実際問題、あまりに偉大なお父さんがいると、子どもに同じ競技を習わせるのは悩ましいところ。そこに迷いはなかったのでしょうか。
「柔道って、競技としてだけじゃなくて挨拶とか基本的なことも学べるので、ひとまずやらせて。お父さんのことは、今はまだ何もわかってないけど、中学生になればその存在の大きさにも気付くだろうし、この苗字が嫌になる日が絶対に来るから。そのときに続けるか、辞めるかは本人が決めればいいと思っています」
「あとは、学校以外の居場所も持ってほしかったんです。学校で嫌なことがあっても道場に行けば忘れられる、そんな環境になればいいなと。道場の先輩後輩関係ってとてもいいんですよ。試合で負けたときも、すぐにママのところに来るんじゃなくて、道場のお兄さんが励ましてくれている。人前で負けることは、子どもながらに恥ずかしいとは思うんですけど、これから社会に出たときに挫折して立ち直れない大人になったら困るので」
近年では、勝ち負けをつけない教育の流れもある中で、井上家はあえて勝ち負けのある世界にこだわります。早くから「負け」を知ることで打たれ強くなれる。その強い心こそ、母親として子どもにあげられる最大の贈り物なのかもしれません。
本をパラパラめくると見えてくる。やっぱり家族がいちばん大切
最後に、本に収められたたくさんの日常の写真のなかで、東原さんのお気に入りを聞いてみると、「どれだろう〜!? 本当に日常風景ばかりなので難しいですね」と悩みながら選んでくれたのが、家族みんなで食卓を囲んでいる写真。
そう、この本の中で家族の風景と並んで多いのが食卓の写真なのです。東原さんの人生の中でプライオリティが高いのは、間違いなく家族。パッと本を開くだけでそれが伝わってくるはずです。
「意識していなかったですけど、たしかに食べることというのは家族の基盤ですよね。いちばん大切にしていることかも」
東原さんの、井上家の、今のリアルがふんだん詰まった写真集のような、エッセイのような本。読み終わったあとは、自分の日常もまた愛おしく感じられそうです。
『life is good - 東原亜希の幸せな家族をつくる日々 -』は4月10日発売です。
東原さんへのインタビュー、次回はご自身の人生やキャリアへの考え方について伺います。お楽しみに!
<書籍紹介>
『life is good - 東原亜希の幸せな家族をつくる日々 -』
東原亜希 著 2000円(税別)
井上家の1年を追いかけたドキュメンタリースタイルブック。
4人の母として多忙な日々を送りながら、モデル、実業家としても活躍中の東原亜希さんに1年を通して密着取材。
母としての姿勢、子育てや仕事との向き合い方、東京オリンピックで監督を務める柔道家 井上康生さんを支える姿、夫婦のことなど、今だから知りたい! を詰め込んだ1冊。東原亜希さんの飾らないリアルな生活を大公開します。
取材・文/宮島麻衣
構成/片岡千晶(編集部)
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