日本もいよいよ緊急事態宣言へ。すでにロックダウンが行われて3週間経つパリは今どうなっているのか。パリ在住の起業家より緊急レポートが届きました。

そこには、パリ市民をめぐる状況とともに、新型コロナウイルスと戦うハイブランドの姿がありました。

写真:Shutterstock

ミラノ、ニューヨーク、パリ、ロンドン。
世界的なブランドが生まれた都市が今、医療危機に陥っています。
私が住むパリ市内の病院はすでに重症患者でパンク寸前、たくさんの患者が地方の病院に特急電車や軍事用航空機で搬送され、ギリギリのところで医療崩壊を防いでいます。
3月12日にフランス国内感染者数が約2,800人になり、政府は外出自粛要請を全国民に出しました。

しかし、感染者数は3日後に倍増。17日にはフランス全土ロックダウンがアナウンスされ、スーパーマーケットなどの生活必需品を扱う小売店以外の営業は全て停止となりました。
個人の外出は1日1時間、半径1km以内だけ許可され、外出中は必要事項を記入した許可証を持ち歩くことが義務付けられています。

警察総動員で街は見張られ、規則に反した場合は135€の罰金を課せられます。
フランス全国民がこの規則を厳格に守りつつ軟禁生活を続け、3週間が過ぎようとしていますが、感染拡大は依然として収束していません。
4月6日現在、フランスの感染者数は約7万人。死者数は8000人以上にのぼります。


今、ここではフランス国民全員が、一致団結して新型コロナウイルスと戦っています。そしてパリのブランドたちもまた、その最前線で、ものづくり企業としての姿勢を示そうとしています。

 


コスメ生産ラインで消毒ジェルを生産


LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)は、「ディオール(DIOR)」や「ゲラン(GUERLAIN)」「ジバンシイ(GIVENCHY)」などの生産ラインを消毒ジェルの生産に利用し、毎週12トンもの消毒ジェルをフランス医療機関に寄付しています。
ロレアル(L'Oréal)も同様に、消毒ジェルの生産を開始し、フランス医療機関だけでなく食品企業などにも提供し始め、新型コロナウイルスで最も経済的にダメージを受けた人々を支援する団体にも、100万ユーロ(約1億1700万円)の寄付をしています。
そのほか、ロクシタン(L'Occitane)、ギノー(Ginot)、クラランス(Clarins)などのコスメブランドも消毒ジェルの生産を行っています。

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従業員の雇用を守るだけでなく、多額の寄付も


新型コロナウイルスで休業を余儀なくされた全ての企業に対して、フランス政府は就業停止状態の従業員への給料を負担することを決めました。他にも、税金、社会保障費の支払いの無期限延長。家賃、光熱費などの固定費支払いの一時停止などの支援措置を行っています。
就業停止状態の社員に対しては、企業は通常の85%の給料を支払うことが義務付けられているのですが、HERMES,CHANELの両社は就業停止状態の全従業員に対し100%の給料を自社で支払い、政府の支援措置も一切受けないという姿勢を示しています。両社は政府に対し、支援措置に割り当てられていた予算を他のもっと支援を必要としている中小企業の支援措置に当てて欲しいと要請しています。
また両社はフランスの医療機関に対しても多額の寄付を行い、自身の生産ラインを再利用した消毒ジェルの生産も行っています。

 
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