心臓病、糖尿病、喘息や肺気腫と、新型コロナウイルスの関係は?
志村けんさんの命を奪った新型コロナウイルス感染症。SNSなどでは、悲しみの声とともに、これまでの喫煙の影響を伝える投稿や持病があったのではないかといった憶測の声も見られました。
ここでは、新型コロナウイルス感染症で、一体どのような方が重症化し命を奪われてしまったのかをこれまでの報告から紐解いていきたいと思います。
まず、中国の70000名を超える感染者についてまとめた論文(※1)をご紹介します。この中で、以下のようなお病気をお持ちの方の致死率が高かったことが報告されています。
この報告では全体の致死率が2.3%でしたので、それと比べると、心臓の病気、糖尿病、喘息や肺気腫といった慢性的な肺の病気などをお持ちの方で致死率が高いのがお分かりいただけると思います。
特に、糖尿病や高血圧、喫煙習慣と密接に関連した肺気腫のように、生活習慣に関連したありふれた病気が複数見られるのが分かります。ここからは一般論になりますが、このような生活習慣病を日頃からしっかりと治療、管理しておくことも大切です。
また、肺炎が両側の肺に広がり、重症化した方には、以下のような特徴を持った方が多かったことも報告されています(※2)。
なぜ性差が生まれるのかなど、その理由についてはあまりよくわかっていません。もしかすると何か見えないバイアスがあるだけかもしれません。しかし、これらの特徴を並べてみてください。60代や70代の男性で、高血圧や糖尿病を持っている。もしかすると、今読まれているあなたのお父様や上司はまさにこれに該当するかもしれません。そういった身近な方を守らなければならないのです。
さらに、イタリアからの報告(※3)によれば、重症化し死亡に至った方たちの合併症の数は平均すると2.7個ほどだったとされています。持病が多い方ほど、命に繋がりやすいとも言えそうです。
しかし、これは持病がなければ大丈夫ということを意味するわけではありません。持病が確認されていない方の死亡例は比較すれば少ないですが、0ではありません。
また、ご家族やご友人、行きつけのお店のマスターなど身近な方に持病をお持ちの方がいらっしゃれば、その方に感染を広げ、重症化させてしまうリスクがあることを忘れてはいけません。
新型コロナウイルスと喫煙のセットはどれだけ危険か
では、タバコの方はどうでしょうか。
まず、タバコに深く関連した肺気腫や心臓の病気がコロナウイルスによる死亡のリスクにつながることはすでにお伝えした通りです。このことから、喫煙習慣が、タバコに関連した病気を通して間接的にリスクを高めるということはお分かりいただけると思います。
しかしそれでは、「タバコは吸うけど大して吸わないし、肺気腫もないので大丈夫」と反論を受けてしまいそうです。
この問いに答えようとしてくれている研究は、まだしっかりと第三者の評価を受けた論文にはなっていませんが、実はすでに報告されているものがあります。
イギリスの研究グループが示したものですが、これまで報告された15本の論文の中から喫煙者と非喫煙者のデータを割り出して、比較検討をしています(※4)。
このデータによれば、喫煙者は、非喫煙者や過去の喫煙者と比べて、約1.5倍重症化する可能性が高かったことが示唆されています。また、肺気腫がすでにあり新型コロナウイルス感染で入院した方では死亡率が約6割にも達していたことが報告されています。
このようなデータは、新型コロナウイルスに限らず、肺炎を起こす他の病原体でも同様の結果が示されており、矛盾しないものと言えます。
喫煙が肺にダメージを与える印象は皆さんもお持ちだと思いますので、想像は難しくないかもしれませんが、実際に試験管レベルの実験では、タバコによって肺にあるウイルスの受け皿が増える可能性も指摘されています。
また、外出中に汚染された手でタバコを取り出して吸う行為によって、手から口へという感染機会を生み出すことにもつながります。
皆さんご存知だと思いますが、タバコは、数多くのがんや心筋梗塞、脳梗塞などの多岐にわたる病気の原因にもなります。
この感染流行を機にタバコをやめられれば、コロナウイルス感染で命を落とすリスクを下げうるだけでなく、感染流行が過ぎたあとにまで大きなメリットがあります。
これはタバコを吸っている方にとって、人生を変えるような大きなチャンスになるかもしれません。
ご家族、お友達、あるいは職場の同僚。もしタバコを吸っている方が身近にいれば、これを機会に声をかけてみませんか。その一言が、その方の命を救うことになるかもしれません。
参考文献
1. Wu Z, McGoogan JM. Characteristics of and Important Lessons From the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Outbreak in China. JAMA [Internet] 2020 [cited 2020 Apr 1];Available from: https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2762130
2. Wu C, Chen X, Cai Y, et al. Risk Factors Associated With Acute Respiratory Distress Syndrome and Death in Patients With Coronavirus Disease 2019 Pneumonia in Wuhan, China. JAMA Intern Med [Internet] 2020 [cited 2020 Apr 1];Available from: https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2763184
3. Onder G, Rezza G, Brusaferro S. Case-Fatality Rate and Characteristics of Patients Dying in Relation to COVID-19 in Italy. JAMA [Internet] 2020 [cited 2020 Apr 1];Available from: https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2763667
4. Arabia S, Health D, Arabia S, Heart N, Arabia S. Prevalence, Severity and Mortality associated with COPD and Smoking in patients with COVID-19: A Rapid Systematic Review and Meta-Analysis. 2020;1–20.
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