――少し前の老後資金2000万円問題もあり、40~50代でも、老後に向けた投資に興味を持つ人も増えています。

山崎:一つおすすめの考え方があります。「360万円」という単位のお金です。

例えば将来65歳で引退して95歳まで生きるとすると、老後は30年間です。つまり360ヶ月あります。65歳の時点で360万円あれば、年金にプラスして、貯蓄から月1万円を取り崩して使うことができる。もし3600万円あれば、1か月に10万円資産を取り崩すことができます。

3600万円持っている人が、投資で10%、つまり360万円損をしたとすると、老後使えるお金が、月1万円減ったという計算になります。例えば、老後に取り崩せるお金がひと月に1万円減っても大丈夫だと思うなら、360万円の損は許容できるリスクです。

ちなみに、インデックスファンドといって、日経平均株価やアメリカのダウ平均などの指数に連動する投資信託に投資していれば、1年間に3分の1くらい損するのが最悪のケースとして考えられます。

「360万円損をしても大丈夫」という人は、3倍すると1080万円なので、「1000万円くらいまでインデックスファンドに投資してもいい」と考えるといいでしょう。
「損失許容可能額の3倍のお金で投資する」というイメージです。

 

――ちなみに、今回コロナショックに直面して、山崎さんご自身は投資に関して行動されましたか?

山崎:私は証券会社の社員でもありますし、マーケットに対してコメントする仕事をしているので、実は個人的に投資はあまりしたくないと思っています。

もし仮に、ソニーの株を持っていたとして、「どんな株がいいですか」と聞かれれば、「ソニーがいいです」と言いたくなるでしょうが、それは株価を上げるための卑怯な発言という気がします。でも、自分ではソニーがいいと思っているのだからソニー以外の企業名を上げるのも違うと思います。

そのため個別株は売買せず、世界中の株に投資するバンガード社のETF(上場している投資信託)をいくらか持っています。今回のコロナショックで、その価格は3割ほど下落したので、追加で買い時ではあるのですが、投資商品の売買の際に、勤務先の手続きが面倒なんですよね……(笑)。だから何もせず、そのまま放っておくつもりです。

投資を始めたら、ニュースを見て焦って売ったり買ったりせず、私のようにのんびりしたスタンスでいい。つまり、「プロに聞かない」「店舗に行かず、ネットで買う」「慌てて売ったり買ったりしないで、淡々と買う」――この3つが大事ですよ。

撮影/山本遼
取材・文/西山美紀
構成/片岡千晶(編集部)


 

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