「お金のプロの方は、お金についてどんなふうに考えているの?どうつきあっているの?」というミモレ編集部の疑問から生まれたインタビュー企画。マネー業界の著名人に「お金について知っておきたいこと」「お金の価値観」についてじっくり伺っていきます。今回ご登場いただくのは、経済評論家の山崎元さん。マネーコラムニストの西山美紀と編集部の片岡がお話を伺いました。

<今回お話を伺ったのは……>

 

山崎元さん
経済評論家。専門は資産運用。楽天証券経済研究所客員研究員。マイベンチマーク代表取締役。1958年北海道生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事、野村投信、メリルリンチ証券など12回の転職を経て、現職。雑誌連載、テレビ出演等で活躍中。著書に『マンガでわかるシンプルで正しいお金の増やし方』(講談社)、『お金で損しないシンプルな真実』(朝日新聞出版)等多数。

 


45歳はセカンドキャリアを考えるタイミング


――今回のコロナ問題も含めて、さらに先行き不透明な時代。40~50代の人が今後の資産形成を考えていくうえでのアドバイスをいただけますか?

山崎元さん(以下敬称略):まず「自分にとって影響の大きいもの」から順番に考えるのが合理的ですね。多くの場合一番影響が大きいのは、「どう働いて、いくら稼ぐか」だと思います。

自分の人材価値はどのくらいあるのか。それを改善していくには、またはそれを守るにはどうすればよいのかを、今一度考えたいですね。
“人材価値”は、仕事の能力とその能力を実際に使った実績です。それに、今後どれだけ働けるかの年数がかかわります。数式でいえば、「(能力+実績)×年数」ですね。

30歳と40歳の人が、仕事の能力と実績が同じであれば、30歳の人の方が圧倒的に人材価値が高くなります。10年多く働けますし、その間に経験によって能力の向上を見込むことができるからです。

――年功序列ではなくなり、様々な人と仕事をする時代ですし、自分の価値を見極め、高めていきたいですね。

山崎:はい、そうですね。私は「45歳くらいをめどに、セカンドキャリアを考え始めましょう」と提案しています。今の時代、60歳や65歳で仕事を引退して、死ぬまでゆっくり暮らす人は少ないでしょう。そのため、おおむね60歳以降何をしたいか、早めに考えておく必要があると思います。

セカンドキャリアで必要なものは、「能力」と「顧客」です。例えば、「いつか大学の先生になりたい」と思ったら、博士号を取得したり、大学内に人脈を作ったりとかなりの時間が必要です。

ペンションをやりたくても、ペンションを開いたとたんにお客さんが来てくれるわけではありません。戦略を立て、事前に見込み客を作っておく必要があります。税理士になろうと資格を取っても、すぐに仕事が来るわけではありません。資格取得後についても考えて準備しておく必要があるでしょう。

セカンドキャリアを築くには、準備に時間がかかります。ですから、45歳くらいから考えることをおすすめしています。

 

――60代はずっと先のことだと感じますが、40代から地続きですものね。

山崎:はい、私は転職をたくさんして、今の会社で13社目なのですが、昔勤めていたある商社では、45歳くらいで通称“たそがれ研修”なるものがありました。ファイナンシャルプランナーがきて「みなさんは1か月で生活費がいくらかかっているかご存知ですか?」と質問され、40人中、手が挙がるのが2、3人ほど。大手企業で、定年後は公的年金と企業年金あわせて、40~50万円ほどもらえるので、老後のことはあまり心配していないのでしょう。

でも、日々贅沢をして、定年後も海外旅行に年に1度は行きたい、ゴルフは月1回……なんていっていると、もらえる年金がいくら多くても、お金はどんどんなくなります。
めぐまれた会社に勤めていても、老後のお金の計画は大切です。

 
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