「コロナ疎開」に意味はあるのか

【現場医師の要望】医療崩壊させないための「引き算の支援」とは_img0
 

次に、医療の需要について考えていきたいと思います。

 

特に若い世代や持病のない方の間では、「どうせ感染しても重症化しない」と、この感染症を重く捉えない声も聞こえてきます。しかし、そういった方こそがウイルスを媒介する運び屋となり、多くの方に感染を広げている可能性があります。感染者が増えれば、それだけ重症化する方が増え、医療需要はますます増加します。

この需要を減らすためにできることは、まず自分が感染しないこと、そして人に感染させないことです。このためにできることこそが、常日頃叫ばれている”STAY HOME”であり、ソーシャル・ディスタンスです。外出を堪えて自宅で読書をする、勉強をする、あなたのその時間こそが、実は社会を医療崩壊から守ることにつながっています。あなたの読書が、社会貢献につながっているのです。

流行状況を見て、沖縄の離島や田舎に移動されるいわゆる「コロナ疎開」も報じられています。これは、移動中もその前後もソーシャル・ディスタンスが十分守られているならば、必ずしも批判できるものではないかもしれません。

しかし、流行が起きていない地域に移動したからといって、頻繁に出かけ、多くの人と接すれば、気づかぬうちにあなたが感染を広げてしまう可能性があります。また、特に注意が必要なのは、そのような地域ではそもそも医療のキャパシティが小さい傾向にあるということです。このため、より一層、感染から守られなければいけないのです。そのような認識をぜひ強く持っていただければと思います。


「不要不急」の受診を避ける


また、医療という側面では、不要不急の外来受診、処置、手術をお待ちいただくことも需要を減らすことにつながります。この感染症の流行は、同じ状態がずっと続くということはないでしょう。仮に「withコロナ」の時代が訪れるとしても、感染者数は「山あり谷あり」になることが予想されます。この「山」の間には処置ができなくとも、「谷」の時期が来れば処置ができるようになります。

もちろん、すぐに行わなければいけない処置や手術は別です。病気は新型コロナウイルス感染症だけではありませんから、感染を気にしすぎるあまり、違う病気で命を落としてしまっては元も子もありません。しっかり治療を受けていただく必要があります。

あくまで、主治医と相談の上「急ぎではないですよ」と言われているものについては、お待ちいただければと思います。

それが、医師の時間を生むことにつながり、その時間が、診療のキャパシティを増やすことにつながります。

高価な人工呼吸器を量産しなくても、ここでご紹介したような一つ一つの小さな取り組みが重なることで、この国の医療は守られ、医療崩壊を防ぐことにつながります。

そしてその先に、科学やイノベーションが、この長いトンネルの先を明るく照らしてくれる時が来るはずです。

それぞれに辛抱の日々が続いていることと思いますが、物理的な隔絶が強いられながらも、人と人とが助け合うつながりこそが、この難局を救う鍵になっているのだと感じています。


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